スーパースター ユリウス・カエサルが「匙は投げられた」といってルビコン川を渡って以後、後継者のオクタヴィアヌスが独り立ちするまでを3巻にわたって描きます。
著者も書いていますが、戦略については素人でも、これだけ戦記を読むと戦法として大事なのは「敵の主戦力の非戦化に成功した側が勝ち」ということになります。この時代では騎馬隊をどう使って、敵の裏に回りハサミうちにするかがポイントのようです。
ポンペイウス死後、帝国の樹立への改革をする中巻
エジプトでのポンペイウスの死後、地中海世界を抑えたカエサル。様々は改革を始めます。カエサルにとって軍事は「政事」をやるための手段に過ぎないといことがわかります。元老院体制といった政治機構はもちろん、通貨、暦、都市計画など現代においても非常に考えさせられる改革をしています。
カエサルが内政的にも天才であったということがわかる中巻です。
暗殺、その後の13年の不毛な悲劇の下巻
「ブルータス、お前もか」という名言がある暗殺劇から始まる下巻。アントニウスとオクタヴィアヌスの懐柔と対決が描かれます。
暗殺者たちは、カエサルを目的にしていたが、暗殺成功後は立ちすくみました。その後のビジョンがなかったのです。政権打倒が目的でその後何も出来ないのは、ちょっと前の日本だけではないようです。
カエサルの遺言状は暗殺当時、18歳だったオクタヴィアヌスという無名の若者を後継者に指名します。このオクタヴィアヌスには、カエサルにはなかった「偽善」という才能がありました。カエサルの右腕で当時の実質的な権力者のアントニウスと三頭政治を始めるなど、自分が力をつけるまでの時間稼ぎをするなどうまいです。
この辺りを早々に見抜いていたカエサルもさすがです。
その後、オクタヴィアヌスは、アントニウスとは対峙することになります。この対峙時においての見所は、何といってもクレオパトラの存在です。クレオパトラにメロメロになるアントニウス。上手く付き合いをしたカエサルとの比較が面白いです。カエサルとクレオパトラだとカエサルの方が一枚上手だったけれども、アントニウスに対しては、クレオパトラの方が上手だったようです。
しかし著者が女性ということもあるかもしれませんが、クレオパトラに対してはかなり厳しい書き方をしています。「女の浅はかさ」とか。
3月15日のカエサル暗殺がなければもう少し歴史が早く進んんだことは間違いありません。ちなみに「ブルータス、お前もか」と言われたブルータスは、首謀者のマルクス・ブルータスではなく、カエサルの部下だったデキムス・ブルータスだったのではないかというのが、著者の意見でした。この辺りはWikipediaとは違う解釈で興味深いです。
さて次はいよいよ帝政スタートです。
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