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(読書)ローマ人の物語 パクス・ロマーナ

本書の帯にある言葉。
天才の後を継いだ天才ではない人物がどうやって、天才が到達できなかった目標に達せたのか

ユリウス・カエサルの後継者となったアウグストゥスの統治物語が本書です。大きな戦闘もないものの、そのゆっくりとした、しかし着実に進められる帝政への布石。その持続する意志に驚かされます。

指導者に求められる資質

本書内で指導者の資質について言及している箇所があったのでまとめておきます。これはイタリアの教科書にも出てくるということです。
  • 知性
  • 説得力
  • 肉体上の耐久力
  • 自己制御の能力
  • 持続する意志
この5つが指導者の資質ということです。カエサルだけがすべてを持っていた天才だった。一方、アウグストゥスは、説得力に関しては、全くダメ。演説が下手だったそうです。体は弱い(著者はそれでもだましだまし長生きしたので100点を与えています)。知性に関しては、真のクリエイティを発揮したのはカエサルである点を考えるとそこそこ。
しかしカエサルに勝るとも劣らない点が、持続する意志という部分でした。
 
カエサルが描いた帝政に向かってゆっくりと、着実に実行していく姿が本書中に溢れています。幸運にもアウグストゥスは長寿でした。
長生きすることは親しい人の死に出会う回数が増えることである。

本書ではこう書かれていますが、世継ぎや盟友に先に死なれても「持続する意志」は微動だにしませんでした。

盟友 アグリッパの存在

カエサルに世継ぎに指名されたアウグストゥスでしたが、体が弱く、戦闘も苦手。そんなアウグストゥスの右腕となり支えたのがアグリッパでした。
彼もまたカエサルアウグストゥスを支えるようにという遺言通りに行動した人でした。このアグリッパの支え方が尋常ではありません。
アウグストゥス統治時代の戦闘部門を取り仕切るとともに、何とアウグストゥスの娘と結婚し、子供を残すことに協力までしています。
ちなみにアウグストゥスの血へ執着は強く、途中かなりのページを使って書かれています。
公私ともにアウグストゥスを支え続けたアグリッパ。アウグストゥスの「持続する意志」とともに、カエサルの威光とはそれほどまでだったのでしょう。

ローマの再開発について

まちづくり的に興味深い記述があったので、備忘を兼ねて記しておきます。
都市計画とは、一人ですべてを計画するよりもいくつかの「核」になる建物を「公」が担当し、その周辺は「民」にまかせたほうが人間的な街づくりになる。

カエサル時代には途中だったローマの再開発をアウグストゥスは受け継ぎ実行していきます。その中で、上記のような記述が出てきます。

これは現代にも通じますね。街の面白さは実は路地にあったりします。それは「公」の力ではどうにもならない、「私」の力が発揮される部分です。この「私」をどう発揮してもらうかの土壌づくりが大事なんだと思います。

 

まちづくりも平和があってこそ。ちなみにパクス・ロマーナとはローマによる平和という意味。平和によって繁栄を謳歌した時代、次作からはさらに帝政が続きます。

 

 

 

ローマ人の物語〈14〉パクス・ロマーナ(上) (新潮文庫)

ローマ人の物語〈14〉パクス・ロマーナ(上) (新潮文庫)

 
ローマ人の物語〈15〉パクス・ロマーナ(中) (新潮文庫)

ローマ人の物語〈15〉パクス・ロマーナ(中) (新潮文庫)

 
ローマ人の物語〈16〉パクス・ロマーナ(下) (新潮文庫)

ローマ人の物語〈16〉パクス・ロマーナ(下) (新潮文庫)