だらだらと読み続けているローマ人の物語。
ネロ~ネルヴァまでのドタバタのあとのローマが一番豊かだった時代、のちに五賢帝といわれる時代のお話しです。
黄金の時代の3人の皇帝
五賢帝とは、ネルウァ、トライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、マルクス・アウレリウスの5人。本書ではその真ん中の3人の時代について書かれています。
この3人の一口メモです。
- トライアヌス…「至高の皇帝」。初の属州出身の皇帝。ドナウ川北のダキアとアラビアを併合。帝国全土での公共事業。プライベートも突っ込むところがない賢帝。
- ハドリアヌス…「ローマの平和と帝国の永遠」。トライアヌスから継いだ後、粛清を引くものの、その後帝国全土を訪問し、各地の防衛線の再整備を行う。安全保障体制の確立。
- アントニヌス・ピウス…「秩序の支配する平穏」。劇的な生涯も送らず醜聞にも無縁。ただ平穏を守ることができた皇帝。「徳」の人。
七生の名言
「ローマ人の物語」の面白さは、学術書でもなく歴史小説でもない点です。著者の考えが随所に出てくるところです。
その中からいくつか。
人間の仕事の進め方は、大きく分けて次の二つに分類できる。
一つ、そしてまた一つと、完成させては次に進むやり方。
すべてを視界内に入れながら、それらすべてを同時進行的に進めていくやり方。
年上の女が”弱くなる”年下の男の条件とは何か。
第一に、美しいことである。ただし、容姿が美しいというよりは、美しい!と思わせる「美」のほうだ。
第二は、若々しさ。新鮮さが立ちのぼってくるたぐいの若さ(フレッシュ)を指す。
第三は、頭脳が明晰であること。こうなると、知識よりも知力が重要視されるのは当然だ。年上の女は、次代の勝者になりうる若者を愛するのである。
第四の条件は、感受性が豊かであることだ。
条件の最後は、野心家であること。ただし、世間を熟知した女の心でさえも刺激するのだから、出世したいとか金持になりたいとかの小さな野心ではない。いだく本人がその実現には誰よりも不安を感じている、大きな野心でなければならない。
ハドリアヌスが皇帝になれたのは前皇帝のトライアヌスの妻のプロティアが惚れこんでいたからというところでの、年上の女の考え方がまとめられています。これにはうなりました。
自らの考えを実現するという幸運に恵まれた人と、それによる成果を享受する人とは、別であって当然ではないだろうか。とくにそれが、公共の利益を目的としたものであればなおのこと。
ハドリアヌスが行った数々の公共事業について。これぞ公人の鏡です。
人間社会ではくり返される現象だが、過激が勢いをもちはじめると穏健は影をひそめる。
イェルサレムでの騒動での表記。たしかに歴史上これは事実。多くの暴動、戦争がこれによって行われてきました。まぁ穏健派が強行になると、それは過激派ともいえるのでなんともいえませんが。
マキアヴェッリによれば、リーダーには次の三条件が不可欠となる。「力量」「好運」「次代への適合性」である。力量があり好運に恵まれていても、その人が生きる時代の要請に応えうる才能を欠いていたのでは、良きリーダーではない。
アントニウス・ピウスの賢帝たる所以を示すために用いた引用。アントニオ・ピウスはこの時代だったことに恵まれた皇帝だったということ。
統治される側にとって幸福な時代は、この三条件(「力量」「好運」「次代への適合性」)すべてを持ち合わせながら「質」はちがうリーダーが、次々とバトンタッチしていく時代であるのかもしれない。
まさにこれ!企業がベンチャーから次のステップに進むときに違う質のリーダーが必要になることと同じです。本書で一番腑に落ちた部分。
一個人の特徴はなかなか変えれないとすると、自分がどういうタイプかを見極めて、自分の働く場所がどのフェーズかを考えて、その役割が生かせる会社なり部署に身を置くのが一番幸せな働きかたなんだと思います。