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(読書)物語 シンガポールの歴史/岩崎育夫

夏休みの旅行先をシンガポールにしたので、それもあって読みました。

個人的にはあらためてアジア金融中心地としての地位を獲得しているシンガポールにも興味がありました。またマレーシアからどうやって独立したのかなども気になっていました。

資源も人も国土も技術もなかった国が日本を抜いて国民一人当たりの所得がアジア1位にまでなったか、という疑問に本書は答えてくれます。

イギリス支配、暗黒の日本の統治、そしてマレーシアからの分離独立

本書は年代に沿って説明されていきます。まずはラッフルズに始まるイギリスの統治時代。暗黒の日本の占領時代、マレーシアとしての独立と追放による分離独立。

特に読み応えがあるのは、マレーシアからの分離独立後についてです。人民行動党によるほぼ一党独裁リークアンユーによる25年にもおよぶ統治の部分は非常に面白かったです。

シンガポールリークアンユーの個人的創造物」とか「明るい北朝鮮」とかは、よく言ったものですが、それだけのリーダーシップと結果を残したところは評価すべきではないでしょうか。国内に反乱を起こさせないだけのリーダーシップと率いていくビジョンを持った人間がいる場合は、その人間一人に国家の運営を任せた方が上手くいく事例の一つです。リーが私利私欲に走らず、潔癖の人間だったのがよかったのでしょうね。

シンガポールの発展のために

著者はシンガポールの特徴を7つ挙げています。

  1. 経済発展が最大の国家目標
  2. 近隣諸国より先の経済発展段階を求めた
  3. 上記の行為が国家主導で行われた
  4. 政治や民族が経済発展の手段として考えられた
  5. その結果、シンガポール独自の文化が育たなかった
  6. 世界、特に欧米に対して政治と経済を使い分けた
  7. いまだ国民の価値軸が模索段階である

 

すべては経済発展のために。

 

資源も産業もないシンガポールを統治するリーが目指したのは、経済を発展させることで国をまとめるという方法だったと思う。

その具体的手段としては、場をつくることと人に投資すること。

場をつくることとは、関税を下げ、ASEANの中心地として外国資本にきてもらうこと。これが中継貿易国として1970年代以降の繁栄をもたらしたことがそのことを証明しています。

また公用語を英語とし、人としての教育制度を整えたりしています。人に投資することが一番効率的であり、それ以外に選択肢がなかったということでしょう。

 

それにしてもリークアンユーという存在の大きさを痛感します。特定の政治イデオロギーや政策に固執せず、現実に適合する限り、どんなイデオロギーや政策でも採用する。一方で、それが機能しないとなるとすぐに放棄するというスタイル。

 

すべては経済発展のために。

 

経済発展のためには、政治イデオロギーや政策なんてものは、経済発展のための道具にしかすぎないという考え方。

政治があって経済があるのではない。経済のために政治があるという考え方をここまで推し進めれた政治家はなかなかいないでしょう。

 

本書は、著者の意見を挟まず事実を淡々と描かれています。読み物としては物語感はありませんが、大局的シンガポールについて学べる一冊でした。

 

物語 シンガポールの歴史 (中公新書)

物語 シンガポールの歴史 (中公新書)