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(読書)ローマ人の物語 最後の努力/塩野七生

だらだらと読み続けているローマ人の物語も終盤戦です。やはり衰退期の物語は読むのにエネルギーがいります。

今回は、ディオクレティアヌスからコンスタンティヌスにかけての物語です。蛮族の侵入が多発した3世紀の迷走するローマ期を一応まとめあげたのがディオクレティアヌスでした。彼は彼なりにローマ帝国をまとめあげようとします。

その結晶が四頭制による分割統治でした。

ローマ帝国は、代々ブリタニカ・ライン河・ドナウ河・ペルシアからの蛮族や敵の襲来を撃退する必要がありました。それぞれの防衛ラインに皇帝(正帝・副帝)をつけて防衛するというのがディオクレティアヌスが考えた方法でした。

しかし彼が退くまでは機能していたこの政治体制も隠居後はそうそうに崩壊します。その崩壊に乗じて再びローマ帝国の唯一の皇帝についたのが、大帝コンスタンティヌスでした。

 

この時期の特徴は、ディオクレティアヌス時代の軍事の拡大&元首制から絶対君主制(市民からかけ離れたところにあって支配するもの)への移行、コンスタンティヌスによるキリスト教の認可(そして奨励)でしょうか。

そして古代ローマからの中世への移行につながります。

コンスタンティヌスにいたっては、首都をローマからコンスタンティノープルに遷都までしてしまいます。こうして古代ローマの伝統は崩れ去ってしまいます。

塩野七生の名言

 恒例の塩野七生の名言をまとめました。

この年代(二十五歳から三十五歳まで)を学ばないで過ごしてしまった人は、一生学ばないで終わる。

ディオクレティアヌスについて述べたもの。

 

人間が決めて実行するあらゆる事柄には、私には神が定めたとされるとて同様に思えるが、プラス面があると同時にマイナス面も合わせもつという性質がある。

ディオクレティアヌスによるローマ軍の再編成について。騎兵中心に再編成することで蛮族の撃退には成功するが、防衛線自体は弱体化や軍事費の増大につながった。

 

分担とは、現にあるものを分割して担当させただけでは済まないのである。

帝国を4つに分割して統治することによって、防衛費の激増につながったこと評して。

 

人間とは、一つの組織に帰属するのに慣れ責任をもたせられることによって、他の分野からの干渉を嫌うようになるものなのである。そして、干渉を嫌う態度とは、自分も他者に干渉しないやり方につながる。自分も干渉しない以上は他者からの干渉も排除する、というわけだ。

ディオクレティアヌスによるミリタリーとシビリアンの分割したことによる評。”専従”は効率的にみえるが、落とし穴があるということ。

 

「そして神にも等しい感覚の冴えと偉大なる意志力で率いた軍勢による正義の戦争によって、暴君を滅ぼしたことをここに記す」

敗北とは何であるかを考えさせられる一文である。昨日までの「皇帝」が「暴君」に一変するのであるのだから。

歴史は勝者によって作られるということ。

 

ローマ人の考える「寛容」とは、強者であっても自分たちの生き方を押しつけず、弱者であろうとその人々なりの生き方を認めることであったのだ。

これぞ古代ローマの最大の美徳だったと思う。

 

戦闘を前にして立てる戦略と戦術は、いくつかの基本的なことだけを決めて、その他のことは戦場で戦況の進み具合を見ながら臨機応変に対処していくものである。事前に綿密に細部まで決めておくとそれに縛られてしまい、戦場ではしばしば起こる予想外の展開に対応できなくなる。

戦闘の戦略の基本。ビジネスにも応用できます。最後は現場調整能力がものをいいます。これに頼ってばかりもダメですが。

 

権力を取り上げれば役割も、そして役割があるからこそ生まれる自負心も、自然に消滅していく。

コンスタンティヌスによる元老院に対する政策について。窓際族にするとはこういうことなのでしょう。

 

熱意を寄せることは、寄せる対象と深くかかわることにつながる。

コンスタンティヌスキリスト教への対応について。そうしてズブズブになっていくわけですね。

 

「ローマ人は三度、世界を支配した。初めは軍団によって。次いでは法律によって。そして最後はキリスト教によって」

キリスト教の死後の救済の概念(現代のキリスト教の認識にも通じる)を作ったのはローマ人であった。そういう意味ではいまでも世界宗教キリスト教にって、世界を支配しているともいえます。

 

統治ないし支配の権利を君主に与えるのが、「人間」ではなく「神」である、とする考え方の有効性に気づいたとは、コンスタンティヌスの驚嘆すべき政治センスの冴えであった。

「神」の承認による権威の裏付けというものが中世の絶対君主制につながります。確かに管理しやすいですもんね。カエサルアウグストゥスによる「帝政」以来に天才的発明ですね。よいかどうかはおいておいて。

 

「アイデア」(支配権の神授説)のほうは、その後も長く、考えようによってはフランス大革命までつづいたのだから長命を享受したのである。長く命を保てたのは、決めるのは人間ではなく神としたこの「考え」が、支配する側にとってはまことに好都合であったからだった。

そうなんですよね。結局は現在の支配する側の都合のよいものが残っていくのですね。

 

キリスト教が幅を利かせる時代の登場です。

 

ローマ人の物語〈35〉最後の努力〈上〉 (新潮文庫)

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ローマ人の物語〈36〉最後の努力〈中〉 (新潮文庫)

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ローマ人の物語〈37〉最後の努力〈下〉 (新潮文庫)

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