★★★★
「誰も知らない」「そして父になる」「海街diary」という名作を撮った是枝監督作品。さすがに作家性抜群の法廷ミステリーの傑作になっていました。
勝利にこだわる弁護士・重盛(福山雅治)はやむを得ず、30年前にも殺人の前科がある三隅(役所広司)の弁護を担当することになる。 解雇された工場の社長を殺し、死体に火をつけた容疑で起訴された三隅は犯行を自供しており、このままだと死刑は免れない。 重盛は、どうにか無期懲役に持ち込もうと調査を開始する。(wikipedia)
重盛と三隅、その娘、咲江を巻き込んだ展開。
本当の殺人犯はだれなのか?もしかしたら三隅は殺していないのではないか?共犯がいる?そして作中にバラまかれている謎たち。
本作の見どころは、本当の殺人犯探しではなく、当事者たちの心理の移り変わりです。一番動かされたのは弁護士の重盛ですが、咲江も終盤、ジェットコースターのように心を揺さぶられます。冷静な三隅も揺れ動く部分があります。まさに登場人物たちの動揺によって、観客側の心も揺さぶられます。
「法廷では、だれも本当のことは語らない」というフレーズが出てきます。
法廷という理論武装の舞台では、そのルールに則って裁きが行われていきます。作中に登場する事実の多くはその舞台では登場しません。
しかし世の中には、舞台にあがらない事実が数多くあり、舞台にあがる事実は様々な人の取捨選択の結果です。結果、舞台と現実の事実は矛盾しあっていることもたたあります。そして現実の事実ですら、それを並べても謎のまま終わっていくこともある。
人は必ずしも合理的に動く訳ではない。矛盾を抱えているのが社会なのだ。
そんなことを考えさせられる傑作の1本です。
この秋、ぜひ必見1本でした!
追記>
広瀬すずってやはり凄い女優だと思います。そのオーラが違います。個人的には長澤まさみ、満島ひかりに続く才能あふれる役者です。