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(読書) 物語オーストラリアの歴史―多文化ミドルパワーの実験/竹田 いさみ (著)

 オーストラリアの旅行に行くということで、手に取った1冊。

 2000年の書かれた本ということで、20年近く前という前程での話になります。

アメリカの反省と移民政策

オーストラリアには独立記念日というものがありません。オーストラリアはアメリカと同じくイギリス植民地でした。アメリカが結局、連邦からの独立という(イギリスにとって)最悪の結果になった反省を生かして、イギリスは徐々に権利を渡すという曖昧な統治政策によって、友好的な関係が続きます。

同じようにアメリカの反省を踏まえるということでは移民政策についてもいうことができます。アメリカでは労働力としてアフリカから黒人奴隷を大量に連れてきました。これによって社会的問題が多発しました(南北戦争もそうですもんね)。

そこでオーストラリアでは労働力として、まずヨーロッパ移民に限った政策がとられました。東欧やアイルランドなどヨーロッパの貧しい国からの移民を労働力として受け入れたのですね。これが白豪主義につながっていきます。

白豪主義からの転換点は、移民政策についてのポイント制の導入になります。これは当初は結果、怠惰な白人の移民受け入れを拒否するために作られたシステムでした。しかし、結果としては優秀なアジア人を受け入れる結果につながります。

またベトナム戦争では、アメリカとともに南ベトナムを支援しましたが、結果敗北し大量の難民を受け入れることになります。オーストラリアでは今でもベトナム人街が多数あるということです。

そして時代は、徐々にアジアの時代に移り変わり、労働力としてのアジア系移民も多数受け入れています。今ではオーストラリアは、アジアの一員としてふるまうスタンスをみせる場面も多くなっています。

オーストラリアの歴史における国のスタンスの移り変わり

移民政策の流れは、外交問題から生じるオーストラリアという国のスタンスにも大いに影響をうけています。

オーストラリア150年の歴史は、外交問題から3つの時期に分けられます。

  1. 第1次世界大戦以前のイギリス中心の時代
  2. 第1次世界大戦以後のアメリカ中心の時代
  3. 1980年ごろ以降のアジアの時代

オーストラリアの外交上の懸念は、いつでも南洋の安定にあります。

当初はイギリス連邦の一員として、イギリスに頼る国でした。仮想敵国は南洋に進出してきていた、ドイツとロシアになります。イギリスとともに防衛線戦をはるとともに、当時イギリスと日英同盟を結んでいた日本とも友好的なスタンスでした。第一次世界大戦でドイツが敗戦、ロシアも日露戦争なども含めて南洋から引き揚げはじめます。

 

しかし第一次世界大戦後のイギリスの凋落で、イギリスは南洋の防衛について手薄になっていきます。そこに進出してきたのが日本です。今度は日本の脅威に対して、オーストラリアはアメリカと友好的にすることによって対抗します。

 

結果、第二次世界大戦の日本の敗北で、南洋の危機はさります。オーストラリアもアメリカとの友好関係を持続し、ベトナム戦争への南ベトナム支援という形で参戦しますが敗戦。ベトナムからの難民を受け入れなど移民政策も変わっていきます。

そして、このあたりから貿易相手国として重要さを増していくのが、日本や韓国といった東アジアの国々になります。

本書として述べられているのはここまでですが、ここ20年で一番貿易額が多くなったのは、圧倒的に中国です。ただ日本や韓国と違うのは、中国は南洋の危機になる可能性があること。

そのあたりはわかっているようで、オーストラリアの前政権は反中国的なスタンスでした(少し前に政権が変わり、安倍外交も一からやり直しになる可能性もあります)。

 

現在のオーストラリアは非常に豊かです。一人当たりのGDPも日本よりも高いです。これは資源国としての優位、人口の少なさ、地理的に平和を享受していることによります。

オーストラリアの繁栄は、南洋の政治的安定です。

オーストラリアは、中進国としての国際社会での立ち回りをうまくやってきた国になります。今後の課題は、中国との向き合い方をでしょう。それは第一次世界大戦後の日本に対して抱いた課題と同じだったということが本書を読むとわかります。

 

物語オーストラリアの歴史―多文化ミドルパワーの実験 (中公新書)

物語オーストラリアの歴史―多文化ミドルパワーの実験 (中公新書)