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(読書)人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか―― スペイン サン・セバスチャンの奇跡/高城剛

ハイパーメディアクリエイター沢尻エリカの元旦那。そんな著者によるまちづくりの本ということで手に取って読みました。

 

学者が書いた訳ではないので、理論立てているわけではなく、あくまで著者の直観的、エッセイ的に語られています。良くも悪くも読みやすい本です。

 

スペインのバスク地方の片田舎であるサンセバスチャン。わずか10年で世界的な美食都市となりました。

それは料理人たちが地元の食材を使うこと。そして知識を共有する(オープンイノベーション)。それはかつて子弟関係としての料理人の育成から一線を画します。またこの町のレストランは、チェーンを出しません。これがこの町を育てることにつながっているといいます。

 

観光業としての生業についていくつか本書では指摘があります。

スペイン南部のそれぞれの街では特定の国の人をターゲットに、そのニーズに応じるように特化している。

絞り込んだターゲット戦略ですね。

 

バルセロナの観光戦略は「市民と観光客が一体となっている」こと。普段、市民が楽しんでいることを、そのまま広げるようなことを徹底している。「作られたエンターテインメント」や、わざとらしい「おもてなし」はありません。

地元の人が楽しんでもらっているものをのぞき見する感覚は、旅の醍醐味でもあります。

 

本書は2013年に書かれたということで、訪日外国人は800万人でした。著者はこのままでは3,000万人にするなどできないと書いていました。幸か不幸か円安であっという間に4,000万人の訪日外国人が訪れています。

為替というものは水ものなので、円高になった時でもこれだけの外国人が来てもらえるのか……。インバウンドで浮かれている今だからこそ、地に足を付けた観光戦略が必要です。

 

ちなみに個人的には、観光産業が発展するというのは、よく言えば熟成した国、悪く言えば衰退しつつある国であることとの合わせ鏡だと思っています。観光業というものは基本的には過去のブランド遺産によるところが大きいです。遺産、伝統、アートなどは一朝一夕では確立できません。

残念ながら日本はその立場になっているということです。