★★★☆
『ぐるりのこと。』から7年。橋口亮輔、監督・脚本による待望の長編最新作。評判を聞いて観に行ってきました。
妻を通り魔に殺された男、食品工場ではたらく女、ゲイの弁護士。それぞれが交錯する群像映画です。
社会というのは不条理でどうしようもないけれどそれでも生きていかなくてはいけない、そんなことが描かれています。
強そうに見える人でも弱さを抱え、強がっているだけかもしれません。
心躍るような感動シーンがあるわけではありません。涙がでることもありませんでした。でもそれが今の世の中なんだと思います。
『トラウマの克服』と『他人には他人の人生があるということ』
最近、よく考えることがこの2つ。この映画はこの2つのことについて、描かれていたと思います。
『トラウマの克服』とは、人が成長する(もしくは生き続けていく)上での通過儀式のようなものだと思います。
それはコンプレックスになり弱さになったします(映画中ではゲイの弁護士を通して感じました)。また時間に解決を任せるしかないこともあります(妻を殺された男)。
もうひとつの『他人には他人の人生があるということ』とは、まさにこの群像劇が象徴しています。それぞれの人には他人には見せない一面があるということ。言えない悲しみや悩みがあるかもしれない。
不器用な人には行きにくい、不条理で理不尽なこの世界。
『他人にもそれぞれ人生があり、みんなトラウマを抱えている』
そう思うと、気が楽になり、周りが少し晴れてみえるような気がします。
そんな師走でした。