Kindleにて読了。
村上ファンドで世の中を騒がせた村上世彰氏の自伝になります。メディアでは悪者のイメージがついている彼ですが、そんな彼側から語ったものになります。もちろんニッポン放送や阪神電鉄の買収についても、彼側の側面で語られています。
これが面白い。メディアというものは、わかりやすいものを切り取って伝えます。実際、ニッポン放送で世間を騒がす前にも、昭栄やダイワボウ情報システムズ、東急ホテルなどで買収、というと聞こえは悪いですが株主側から会社に提案をしています。その際はあまり騒がれませんでした。
しかしメディアや野球球団が対象となると、馴染みがあるのでメディアは面白おかしく切り取って伝えます。それが氏のイメージを作っていきます。
本書を通じて氏が目指したものは、
コーポレートガバナンスの推進
お金を循環させること
の2点に集約されています。
コーポレートガバナンスについては、ニッポン放送とフジテレビの関係が不釣り合いであることなど、非常におかしな状態が手つかずな会社が多々あるとしています。
彼は市場価値が実際の資産よりも低くされている株を買い占め、適正な価格にもっていくことにより利益を得ていました。
そして、上場しているということは、誰にでも株を売買できるということ。もし資金調達の必要がないのであれば、株主に還元(自社株買いや配当)するなり、TOBをして上場廃止をすべきと述べています。
これは不必要に内部留保を嫌った彼らしい発想です。お金は社会の血液といいますが、お金を循環させることこそが景気回復であるという真実をついています。
ROEという発想が欧米にはあり、日本にもそういう考え方があるということがやっと認知されはじめました。
メディアでみる彼のイメージと違う一面を見ることができつつ、お金について、投資について、会社について、考えさせられる1冊でした。平易な文だし、知っている企業名も出てきて読みやすいのでおススメの1冊です。