★★★★
日本映画史上に残る大ヒット作「君の名は。」の新海誠監督の新作。正直「君の名は。」の僕の評価は、興行収入ほど高くありません。
ネット上でも賛否が色々分かれている今作はと少し疑心暗鬼になりながらお盆最終日に7歳の息子と観てきました。カップルばかりの映画館。公開から1か月がたちますが、ほぼ満席でした。
感想としては、「君の名は。」よりも格段に良いではないか!
(下記、ネタバレ含みます)
まず、祈ると晴れるという晴れ女。そして実は祈る度に体が消えていくという設定。これを思いついた監督って凄い。
ここで思い出すのが「時をかける少女」のタイムリープになります。細田守監督の「時をかける少女」好きの僕としては焼き直し感はあるにせよ、身を削って何かをなすという設定はたまりません。
本作では、そこに自分が必要とされているから身を削るという献身と認証の要素も加わっています。
認証欲求とそのためだったら命を削ってもという精神性は、特に感受性豊かな思春期には表に出てきます。
「好きな人のためなら」
こういう感情は、誰しも持っていたのではないでしょうか。本作ではこの思いが男女互いの立場で表されています。
僕が本作で一番好きなシーンは、ラブホテルでの夕食でした。主人公の2人と弟で泊まる池袋のラブホテル。そこでインスタント食品を御馳走として嬉しそうに頬張る3人。これほど刹那的な最後の晩餐はないでしょう。
実際、心の声として「神様、お願いです。これ以上、僕たちに何も足さず、僕たちから何も引かないでください」というナレーションが入ります。
何かが決壊する寸前として、それは起承転結の「転」の直前としての描写として最高でした。
圧倒的な音楽と天気描写
結末については、賛否両論がある本作。一方で、雨や束の間の晴れの天気描写、そしてRADWIMPSの音楽との親和性については異議はないでしょう。「君の名は。」では、どちらかというとRADWIMPSのPVかよと思っていましたが、本作は映画を盛り上げるために練られた感がより強く出ています。クライマックスで存分に聞かせる主題歌とか音楽と映画の親和性を存分に生かした作品となっています。
RADWIMPSの野田洋次郎って、「愛にできることはまだあるかい」とか、そのネーミングからして素晴らしいです。やっぱり野田洋次郎って、言葉遣いの天才だと思ってしまいます。そりゃ若者のココロをつかむわけです。
また同じく野田洋次郎プロデュースのグランドエスケープも素晴らしい出来でした。透明感のある歌声を存分に生かした楽曲でした。
【歌詞付き】グランドエスケープ/feat.三浦透子/RADWIMPS
エンディングについて
本作で賛否を巻き起こしたのが、2人が愛を取ったために東京に3年間も雨を降り注ぐことになった結末になります。
自然に戻っただけという言葉やそれでも花見をしたりとしっかり生きていく人たちを描くことで救いを見出しているので、個人的には大いにアリだと思います。
ネットにあふれる「天気の子」の検証では、本作の舞台は、2021年ということになっています。そう東京オリンピックの次の年です。このあたりってすごく意味深で、日本が沈んでいくという暗示、それでも生きていく人々を描き希望を見せているではないかと勘ぐるのは深読みしすぎでしょうか。
こんなことを考えられる「天気の子」はやっぱり良くできた作品です。それはプロデュース力なんでしょうね。大ヒットの「君の名は。」の後継作としては、立派な作品でした。