40数歳の僕としては、タモリのデビュー当時を知らない。あくまでも「いいとも」の人である。それも途中からはマンネリと言われていた時代を知っている。
若いときは、彼の何が面白いのかがわからなかった。しかし、赤塚不二夫の弔辞に感動し、ブラタモリを好んでみるようになったのは、自分が年を取ったからでしょうか。
本書は、そんなタモリと戦後日本史を重ね合わせた非常に稀有な作品になっています。これが本当に面白く、読み応えがある。
サブカル的要素が多分に含まれており、それは著者がその畑のライターだったこともあるのでしょう。ただそのリサーチ力はあっぱれです。
本書を近現代史としてとらえると面白かったのは満州の部分。タモリの祖父母は満州で暮らしていました。僕の中のイメージでは、満州というのは寒く、灰色で、暗く戦争の影が付きまとうものでした。
しかしタモリは家族から満州の開放的で先進的だった思い出を聞かされて育ったという風に記されています。
当時の満州は、あくまで新天地であり、一旗上げてやろうという気概にあふれた実験の場だったようです。「満州に比べ、日本は暗く陰湿な村社会のつまらないこと」という風に、幼いころから聞かされていたということです。つまり日本を客観的にみる目はこうしたことから始まったのではないかというのが著者の見解です。
これは自分の思い込みと違う部分で、非常に新鮮でした。
タモリは「場の芸人」として、国民的番組のMCを務めます。「夜の芸人」だった彼のこの才能を見出したプロデューサーもまた凄いところです。こうしたメディア史としても面白いのが本書。
ちょっとサブカル好きの方にはおススメの1冊です。