★★★☆
先日「ヤクザと家族」を観たばかりですが、またヤクザ映画(出所後)です。
不器用な殺人犯、出所後の苦悩という点では「ヤクザと家族」にも共通する部分が多分にあります。
母に捨てられ孤児院で育つ。その後暴力団に出入りし、殺人で満期まで刑期に服した主人公。その主人公を演じた役所広司の演技力はすさまじいものがありました。
中盤、主人公が育った孤児院を訪ねていくシーンがあります。
夕焼けに染まるグラウンドで、孤児たちとサッカーをします。そして一人の子どもにすがりつき泣き崩れるシーン。このシーンは、なにも言葉で説明をしなくても涙が溢れました。
世のレールを一度踏み外すとなかなか戻れない。まして最初からレールに乗っていないなんて、だれを責めればいいのでしょうか。それも自分の責任なのでしょうか……。
このレール問題は、レールの上を歩いている人たちにも脅迫観念のように心の根底に横たわっています。一度、外れると戻れない恐怖。だから、何もできない……。現状を守るので精一杯。だけどレールの先がちゃんとつながっている保障もない。
娑婆は生きずらい世界。しかし空が広い。
映画館を出た時の空は、なんとも複雑な色をしていました。それが世の中だといえばそれまでですが、そんな世の中を憐れむのか楽しむのか。