超「整理法」の野口悠紀雄氏の本。切り口が面白く手に取って読んでみました。
歴史の部分としては、「ローマ帝国」と「海洋国家」がピックアップされています。塩野七生の「ローマ人の物語」を読んでいたこともあり、非常に理解が進みました。
「ローマ人の物語」が面白いのは単なる歴史書ではなく、著者による考察が多分に含まれているところですが、その考察の部分のみを抜き出したような本ですので、面白くないわけがありません。
ローマ帝国の繁栄は、著者によると奴隷制度、異質性の尊重、税制(開かれた市場経済)にあるといいます。これらの礎を創ったのは、天才アウグストゥス。このローマの再現を試みたのが、アメリカだったとも述べられています。
そんなローマの凋落は、一般的には蛮族の侵入によって滅びたとされていますが、著者曰く、ビジネスモデルの崩壊によって起こったとしています。
具体的には、拡大路線の放棄、軍事費のための通貨改悪、価格統制による市場経済の機能不全としています。
興味深いのは、不寛容がローマを崩壊させたという部分。ローマが外圧にさらされるようになると、ゲルマン人に対する反発が起こる。ローマの繁栄は他を取り込むことで発達したが、いざ危機に陥るとこの寛容性を失い保守思潮が蔓延し、衰退に拍車をかけた。あれ、どっかの国みたいですね。
ポルトガルとイギリスに見る海洋国家の例でいくと、ともにフロンティアの拡大ということが述べられています。大陸国家の中でも貧しかった辺境のポルトガル、そして島国だったイギリスは、大陸の中の争いを無視(もしくは相手にされない)ところから海に出て行きました。それはポルトガルでは地理的フロンティアの拡大、イギリスにおいては分業と交換という経済学のシステムをつくり、世界の覇者となる。
さて現代においては地理的フロンティアはなくなり、拡張領域は情報分野となっていることに本書では言及されています。
この分野をいち早く取り組んだアメリカが引き続き世界の覇者となり続けているのは必然ですね。
さて、最後に著者の歴史に関する考察が述べられています。成功への要素は色々あり組み合わさらないと成功にはならない。一方、失敗は、要素が欠けることでほぼ必ず失敗となる。つまり失敗をしないために歴史を学ぶ必要があると。
今、日本に必要なことは失敗をしない戦略であり、それをとれない日本はやっぱり衰退しかないのだと思う。