先日読んだ「大阪」に感化されて、岸政彦さんの著作を読んでみました。社会学者でもある著者による小説。なんとも多才なこと。
社会学者、それもスポットライトのあたらない街の風景を描きます。大阪の下町に住む未来が見えない若者の生活。
ドロドロしたわけでもなく、キラキラもしていない。何というか白濁のような世界。ビニール傘の色のようでもあります。
なんだろう、この起伏にもならない絶望な感じ。これが現在日本、大阪のある姿なのかなぁ。
淡々とした文体はどこか女性作家的な雰囲気もありますが、若者的な雰囲気も醸し出しています。外から見るとコテコテな大阪のイメージですが、あるのはこうした何でもない曇天のような日常だったりもします。
それは日本全体に立ち込める暗い雲のようなものと同じでしょう。