フランス人ジャーナリストによるメルケルの評伝。
東ドイツ出身の女性、物理学者という稀有なアイデンティティを持つメルケル。
そのような幼少期をすごしたか、物理学から政治を志したか、並み居る有力者の合間をどうやりすごしいかにして首相になったか、首相になってからの数々の問題対処にどう対応したか。
事実は小説より奇なりですが、とても魅力的な評伝となっています(まるでメルケルのストーカーのごとく、詳しく、そして好意的な評伝でした)。
質素、熟考、合理的。
東ドイツ出身の彼女が、実は一番「民主主義」というものの大切さを身をもって知っている。
トランプの台頭、ブレグジット、各地の極右勢力の台頭、シリア難民問題、コロナ騒動、プーチンとの駆け引きなど、次から次へと課題が降り注いだ在任期間。
特にシリア難民の流入を受け入れたのは、やはり「民主主義」が持つ素晴らしさを本質的にわかっていたからということでしょう。
一方、コール、シュレイダーなど名だたる政治家を蹴落として、首相に上り詰めた手腕も実はなかなかだったということも書かれています。機を見るのが上手いのか、相手が女性ということで油断があったのか。
東ドイツ出身、女性ということで、バランスを見ていた先の体制からするとポストに就きやすかったということもあったということです。ただそのチャンスを生かしたのは、本人です。
ヨーロッパ現代史としても勉強になる1冊でした。