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(映画)紙の月@ミッドランドシネマ

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★★★★

今年の秋は本当に良作の映画が続きます。

昨年のベスト1の衝撃的な映画『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督作品ということで見に行ってきました。

宮沢りえ演じる地味な銀行員の不倫と横領という転落の過程を描きます。

前作『桐島〜』も学園という中のミニマルな中での抑圧と爆発を描いていましたが、本作も考えてみると非常にミニマルな設定になっています。つまり、不倫シーンと銀行シーンとわずかな元の家庭部分で全編が構成されています。 登場人物も非常にシンプル。銀行シーンは、同じ行員の大島優子小林聡美という対比だけでほぼ構成されます。

こうしたシンプルな設定&脚本が、映画全体に漂うフワフワしながらも抑圧された雰囲気を醸し出しているのでしょうか。 脚本&演出とは別にこの映画のもうひとつの魅力は、キャストではないでしょうか。何と言っても主演の宮沢りえの素晴らしさ‼︎

 

なんだろ、この幸の薄い美しさは!

 

地味な行員が不倫ということでレールを外れていく、さらに本質的に後戻りできない横領への道。

人生色々な経験をした人にしか出せないオーラが出ています。 あと脇役の大島優子小林聡美も極端な設定を見事に演じています。 不倫から始まった転落への道、横領によってその転落のスピードは加速します。それは本能が理性を上まる状態なのでしょう。頭のどこかではわかっているけれども、どうしようもないスパイラルに落ちていく姿は観ていて胸が痛くなります。

お金と幸せについて

(ちょっとネタバレあります)

 

映画終盤にて、小林聡美演じる理性派側と本能のままに落ちていった宮沢りえが対峙します。そこではお金と幸せについての本質が語られていました。

横領したお金で散財して、幸せは買えたか?という問い。

それに対して宮沢りえは、お金で買ったものは所詮作り物だと言う。

もうひとつ、小林聡美宮沢りえ、どちらかが惨めかという話も出てきます。 常識的に見れば宮沢りえは、横領が発覚し問いただされる立場ですので、惨めということになる。しかしここでカウンターパンチが出ます。 本能のまま一線を越えて突っ走った宮沢りえ。この本能というものは、理性派の小林聡美は決して理解できない。本能のままという快楽を知らない小林聡美の方が惨めではないか。

 

上記の2つ点を解釈すると、幸せはお金で買えるものではない。もしかしらた本能のままにあれた状態こそが幸せな時ということだったのではないか。

しかし、本能のままにあることは代償も大きい。そしてそれはいつか終わるということに苛まれながら過すことになる。

よく考えると『桐島〜』もそうでしたが、ある意味アダムとイブのような宗教的な要素もありそうですね。

僕らはみんな小林聡美宮沢りえ(あるいは大島優子)の間で生きています。 本能か理性か。

 

色んなことを考えさせられる不思議な映画でした。

 

吉田大八恐るべし。