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(読書)タモリと戦後ニッポン/近藤 正高~稀代のMCと戦後日本史を重ね合わせた面白い1冊

40数歳の僕としては、タモリのデビュー当時を知らない。あくまでも「いいとも」の人である。それも途中からはマンネリと言われていた時代を知っている。

若いときは、彼の何が面白いのかがわからなかった。しかし、赤塚不二夫の弔辞に感動し、ブラタモリを好んでみるようになったのは、自分が年を取ったからでしょうか。

 

本書は、そんなタモリと戦後日本史を重ね合わせた非常に稀有な作品になっています。これが本当に面白く、読み応えがある。

サブカル的要素が多分に含まれており、それは著者がその畑のライターだったこともあるのでしょう。ただそのリサーチ力はあっぱれです。

 

本書を近現代史としてとらえると面白かったのは満州の部分。タモリの祖父母は満州で暮らしていました。僕の中のイメージでは、満州というのは寒く、灰色で、暗く戦争の影が付きまとうものでした。

しかしタモリは家族から満州の開放的で先進的だった思い出を聞かされて育ったという風に記されています。

当時の満州は、あくまで新天地であり、一旗上げてやろうという気概にあふれた実験の場だったようです。「満州に比べ、日本は暗く陰湿な村社会のつまらないこと」という風に、幼いころから聞かされていたということです。つまり日本を客観的にみる目はこうしたことから始まったのではないかというのが著者の見解です。

これは自分の思い込みと違う部分で、非常に新鮮でした。

 

タモリは「場の芸人」として、国民的番組のMCを務めます。「夜の芸人」だった彼のこの才能を見出したプロデューサーもまた凄いところです。こうしたメディア史としても面白いのが本書。

ちょっとサブカル好きの方にはおススメの1冊です。

 

タモリと戦後ニッポン (講談社現代新書)

タモリと戦後ニッポン (講談社現代新書)

  • 作者:近藤 正高
  • 発売日: 2015/08/20
  • メディア: 新書
 

 

(読書)サムライカード、世界へ/湯谷 昇羊~JCBはどうやって世界に出て行ったのかを知る本

実は、カード会社にも就職活動をしていた僕。昔からクレジットカードが好きなんですよね。この本は、JCBがどうして国際カードを目指したのか、どうやってなしえたのかを記録したものになります。

 

それはやはり日本がバブルを受けて、世界に出て行った時期にかぶります。やはり経済力を持つと強いです。「JCBを入れると、日本人が買い物をしますよ」というストーリーで売り込みます。

読んでいて痛快なのですが、あわせてこれが2020年においても行えるのかなぁと思っています。そして当時のJCBの快進撃は、現在の銀聯カードの快進撃にかぶります。

 

日沈む国、日本。

 

そう思ってしまうのです。

 

 

(読書)近江商人の哲学「たねや」に学ぶ商いの基本/山本 昌仁

 昨年、近江八幡にある「ラ コリーナ」に行ってきたときに置いてあったので、気になって読んでみました。たねやの社長による経営哲学の本。

近江商人というと「売り手よし、書い手よし、世間よし」の三方よしが有名ですが、それを現代版に落とし込んで経営している様子がわかります。

キーワードとして「本物志向」「売り切れならそれでいい」「田舎には田舎の闘い方がある」「本業から離れない」「地域の一員として役割を果たす」といった金言が並びます。

個人的に印象に残ったのは、たねやの哲学がつづられた「末廣正統苑」の中に、

「走るなかれ、されど止まるは尚愚かなり」

という言葉があるということです。

商売にはスタートがあってもゴールはないということ。長いスパンで考えることの重要性が説かれています。

伝統ある会社ならではの、次の世代に繋ぐことの大切さを伝えるいい言葉ですね。

 

本書全体的にも具体例が満載なので、読んでいて面白かったです。

 

(読書)宇宙のウインブルドン/川上健一~サーブだけで世界一を目指すという設定をやってみた話

実は40年近く前のテニス小説。サーブだけは世界一という主人公が、それだけを武器にウインブルドン優勝を目指すという話。

よくまぁこんな設定を思いつくなぁというのがまずの感想。児童小説なのか、本当にサクサク読めます。テニスのルールなどを少しだけ知っていれば楽しめます。

 

まぁ無茶苦茶といえば無茶苦茶ですが、それはそれで良し。何も考えなくて読める小説。今度、小学生の息子に読ませてみよう。

 

宇宙のウィンブルドン (集英社文庫)

宇宙のウィンブルドン (集英社文庫)

  • 作者:川上 健一
  • 発売日: 1988/07/20
  • メディア: 文庫
 

 

(読書)最後のトリック/深水 黎一郎~「読者が犯人」という究極のトリックをやってみた実験作

以前、ビブリオバトルで紹介されていた作品。

「読者が犯人」というミステリー界の究極のトリックが題材となっています。そんなことは、不可能だ!という声が聞こえてきますが、ある設定をすればそれは可能ということになります。

 

読んだ結果は、まぁなるほど……という感じでしょうか。おそらく感嘆に至らなかったのは、その設定が、わかるようなわからないようなというところにあるのではないでしょうか。ただそんなことをいうと、山奥の別荘もノンストップの特急列車という状況も通常ではありえない設定ということなので、この設定についてケチをつけるのはナンセンスなんでしょう。

おそらく、頭ではこの設定も受け入れないといけないというのはわかっているのですが、読者を巻き込む時点で、それは本の中の虚構と現実がつながってしまうところに??を感じてしまうのではないかと思われます。

 

ただ理論的には、わかるわけですし、その果敢な挑戦作ということで、一読の価値はありです。

 

それよりも面白かったのは、作中に登場する超能力の研究をしている大学教授のお話し。

動物は、コミュニケーションの方法として、超音波などの方法を使っている。人類はより安易な言葉によるコミュニケーションに頼ったため、そうした能力が退化したのではないかというお話。

ちなみに人類の次の進化あるのであればコミュニケーションの方法による進化というのが、この教授の持論でした。

 

このツールとしての言語という考え方が面白かったです。

ちなみに妻にそれをいうと、おそらく動物がもっているそうした伝達能力では、伝達量が少ないのではないか。人類は、子どもの養育期が長いので、より伝達量が多い言葉によるコミュニケーションを選択したのではないかということを言われました。

クールな妻でなによりです。

 

最後のトリック (河出文庫)

最後のトリック (河出文庫)

 

 

 

(読書)夏フェス革命ー音楽が変わる、社会が変わるー/デイジー

コロナ禍でエンタメ全滅の中に、気になっていたので読みました。

おそらく、コロナ前に読んでいればかなり腑に落ちたのではないでしょうか。著者は全く音楽業界ではなく、外からの考察で、ここまで考えられているのはなかなか素晴らしいです。

主にロッキンオンを中心にした夏フェスについての考察でしたが、あくまでお客さん目線においてはプロということなのでしょう。

この本が書かれたのは2017年でした。なので、考察としては、音楽好きのためのフェスから、音楽+αとしてのフェス(夏祭りや花火大会、ビーチなどと同列)の定着という流れ。インスタ映えや参加者との協奏としてフェスという考察あたりまでがまとめられていました。

このあたりは非常にわかりやすかったです。

 

何かの本で読みましたが、過去において、テクノロジーによって音楽は形を変えてきました。

録音メディアが登場するまでは、ライブが基本でした。その後、パッケージ産業の発達でスタジオ録音で、コンセプトアルバムなんてものが作られるようになりました。カラオケブームでは、サビが重要視されましたし、フェスが登竜門となるとフェスで盛り上がる四つ打ちが多用されました。YOUTUBE&サブスク時代になると、サビが頭にくるような曲が多くなっています。

 

パッケージビジネスの行き詰まりから、ライブに活路を見出した音楽産業。

さて2020年。この世の春を謳歌していたライブ産業がまさかのコロナ禍で壊滅状態となっています。オンラインでの模索も続きますが、これはこれでどうなのでしょうか。

僕自身、いくつかチケットを買ったりして、観てみましたが、どこか物足りなさを感じるのはなぜなのでしょうか。

この物足りなさを改善すればオンラインイベントは定着するのでしょうか……。

そんなことを考えながら読んだ1冊でした。

 

夏フェス革命 ー音楽が変わる、社会が変わるー

夏フェス革命 ー音楽が変わる、社会が変わるー

  • 作者:レジー
  • 発売日: 2017/12/11
  • メディア: 単行本
 

 

(読書)騎士団長殺し/村上春樹~画家という媒体を通して、”伝える”ことについて、考えること

自宅待機の日々なので時間ができ、読書の時間が増えました。今回は、お気楽に小説を読みたいなぁと思い、ずっと読もうと思っていた村上春樹の最新長編『騎士団殺し』を読んでみました。

 

数々の村上春樹作品を読んでいますが、本書は読みやすい!その理由は、主人公が「私」の1人称で進むから。そして村上春樹お得意ワールドのエッセンスが詰まったあらすじでしたので、良くも悪くも予想をしながら読むことができました。

それでも決してつまらないわけではなく、文庫本4冊を5日ほどであっという間に読破できました。

 

主人公「私」は肖像画を描く画家。絵を描くということを、”何か”を画家という媒体を通して描かれるということを感じました。それは村上春樹作品によくある、自分という自己が薄い主人公であるから成り立つのかなぁと思って読んでいました。

当初は画家という媒体を通して”何か”を描くということ発想を楽しんでいましたが、エンディング近くになるにつれ、実は”画家”ということに限らず、”人間”というもの自体、実は意味なんてなく、”何か”を伝えていくということなんだということを感じる作品になっています。

 

著者は、”伝える”ことの大事さを表現したかったのかもしれません。

あと主人公のような自己をあまり出さない主人公をカッコいいと思ってしまうのは、青春時代に著者からの影響が大きい僕だからなのでしょうか。

 

 

騎士団長殺し(新潮文庫) 全4冊セット