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(読書)永遠の旅行者/橘玲~著者の「国を信用しない」という想いを小説に

非常に冷静な視点で、経済や社会を切っていく橘玲氏の小説になります。

普段はこうしたビジネス小説はあまり読まないのですが、橘玲の小説ということで手にとりました。

遺産相続とサスペンス的な話と税法の矛盾をつくという内容が織り込まれた小説になります。正直この右脳と左脳的な融合は難しく、決してうまく絡みあがった作品とはいえませんでした。

それでも遺産相続やサスペンス的な部分は、思ったよりもしっかりとしていて読み応えはある作品でした。

 

主人公への依頼は「相続税を1円も払わずに、孫に遺産相続をさせたい」というものでした。この相続税を1円も払わないという部分には、国家を信用しないという断固たる思いが込められています。

この国を信用しないというのは、橘玲氏が度々述べている持論でもあります。その行く先は、どこにも国籍を持たない、つまり「永遠の旅行者」になるということ。

 

税金をいかに抑えるかというのは、ある一定以上の稼ぎのある人の優先課題になっています。まずはそのステージに行きたいところですが……。

永遠の旅行者〈上〉 (幻冬舎文庫)

永遠の旅行者〈上〉 (幻冬舎文庫)

 
永遠の旅行者〈下〉 (幻冬舎文庫)

永遠の旅行者〈下〉 (幻冬舎文庫)

 

 

(映画)パッドマン 5億人の女性を救った男@ミッドランドシネマ2~10冊の自己啓発本よりもこの映画を観るべき!

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★★★★

 

評判を聞いて観に行ってきました。

2001年、インド。愛する妻のために生理用ナプキンを安価に開発するという男の物語。

 

この映画は実在の「アルナチャラム・ムルガナンタム」という人物をモデルに作られています。そう事実(一部脚色ありですが)の物語です。2001年になってもインドでは生理を不浄のものとして扱われていました。

ナプキン自体はあるのですが、非常に高価なもので、貧しいラクシュミ(主人公)の家では食費を削らなければ買うことができません。これを解決しようと乗り出すのですが、「生理」について口にするだけでも憚られる村の中では異端児扱い。(確かに映画上でも非常に滑稽に描かれています)

そして家族は離れ、妻と離縁させられ村を追われるまでになります。

 

この物語は、こうした「異常」を「普通」にする男の戦いの物語です。その熱意には心打たれるものがあります。それも過去の話ではなく、21世紀の話ということにも衝撃をうけます。

 

そしてただ単に機械をつくっただけでハッピーエンドとならないところがこの映画の面白いところでした。「普通」ならば安価にできる機械について特許をとるということになるのですが、この男はこの機械をインドの貧しい村の女性たちに生活の糧にして機械と使ってもらい製品のナプキンを売ってもらうことにします。

つまり、単に安い生理ナプキンをつくったということではなく、「女性の経済的自立」を進めたのです。ここが単なる発明で終わらず、凄いところです。

だから5億人の女性を救った男なんですね。

 

終盤の国連でのスピーチは、下手な英語ながら感動を呼びます。そこらの自己啓発本を読むよりもこの映画を観ると人生にやる気を起こさせてくれます。

今年観ておくべき1本でしょう。

 

www.padman.jp

(映画)へレディタリー/継承@センチュリーシネマ

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★★★☆

 

究極のホラー映画という触れ込みだったので鑑賞してきました。

この映画のホラー映画の凄いところは、卑怯な脅かし方を使わないこと。特に序盤は実際の世界でも起こり得ることの積み重ねであるということ。

 

予告編では全く意味が分からない内容になっていますが、終盤に明かされる設定を隠すためにはこうした予告編になることもうなずけます。

 

悪魔的な要素は、正直日本人である僕にはイマイチ、ピンときません。おそらく欧米人にとっては、日本的怪談ホラーにつてい理解しづらいのと同じなのだと思います。

個人的にはホラーならばサスペンスホラーの方がより怖いと感じてしまいます。『ドントブリーズ』とか最高のホラーだったと思います。

 

世界的にはホラーの頂点とされているので、劇場で体験しておいて損はないと思います。

hereditary-movie.jp

『中村佑介展 ALL AROUND YUSUKE NAKAMURA』@名古屋・パルコギャラリーに行ってきた!

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先週末まで名古屋パルコで開催だった、大人気イラストレーターの中村佑介の展覧会に行ってきました!

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中村さんは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのCDジャケットや、『謎解きはディナーのあとで』『夜は短し歩けよ乙女』などの書籍カバーを手掛けるイラストレーター。

緻密なノスタルジーを感じる背景にのっぺりとした人物をのせる画風が特徴で、一度見ると中村佑介タッチとすぐにわかる作家です。

 

展示は、これまでの作品に加えて、一部過去の学生時代のものも展示されていました。当時は普通の油絵的なものも描かれていたようです。

面白かったのは彼の作風の特徴の解説。

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彼の作品の特徴である横向きの少女。その多くは左を向いています。

解説によるとそれは未来を見ているということ。マンガなど日本の書物は文字列が右から左に流れていきます。なので左向きは未来をみているということでした。

ここで感じたのは、実は映画などは右向きが未来をさすことが多いということ。横書き文化においては右が未来になります。

そういう意味では、彼は日本的な出版物の上でなりたっているともいえます。

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もう一つ、いいなぁと思ったのが、パステル絵具のプロダクトデザイン。

絵具自体のデザインにあわせた女の子たち。これいいなぁ。こんな絵具だと使えません……。

 

(読書)波の音が消えるまで/沢木耕太郎~中毒的な面白さ

好きな作家の一人である沢木耕太郎。エッセイやルポが面白いなのだが、こちらは小説。

時は香港返還にわく20世紀の終わり。主人公、伊津航平がバリ帰りに立ち寄ったマカオ。当時のマカオはまだアメリカの外資も入っておらずカジノといったらリスボア。そんなリスボアのカジノでバカラというものに囚われていく……。

様々な伏線があり、取り巻く人間像があり、人生哲学のようなもの、そして興奮のあとの清涼なエンディング。

 

序盤はバカラのルールや賽の目についての記述が多く慣れませんでした、中盤からは人間関係や哲学的要素も含まれ睡眠時間を削ってあっという間に読了しました。

特に主人公がもともとやっていたサーフィンで感じた波、そしてバカラという海での出目の波がリンクし始めたあとは、もう自分がこの小説の麻薬のようなものに取りつかれていました。それはギャンブル的なそれを同じようなものなのかもしれません。

 

そういえば、僕がマカオに行ったのは1999年だったかなぁ。その少し前が舞台ということで、当時のことをかすかに思い出しながら読ませていただきました。

 

現実を動かすことができるのは強く信じることができたときだけなんだ。

本書で書かれていた言葉です。強く信じる、それが正しいと信じて疑わないのであれば、実行することができますから。

博打、異国を題材に、少しのバイオレンスと恋愛と哲学が混ざった極上のエンタテイメント。そして著者の代表作「深夜特急」と同じく、果てをみたいという僕にも共通する人間の本能を堂々と描いた作品でした。

 

 

波の音が消えるまで 第1部: 風浪編 (新潮文庫)

波の音が消えるまで 第1部: 風浪編 (新潮文庫)

 
波の音が消えるまで 第2部: 雷鳴編 (新潮文庫)

波の音が消えるまで 第2部: 雷鳴編 (新潮文庫)

 
波の音が消えるまで 第3部: 銀河編 (新潮文庫)

波の音が消えるまで 第3部: 銀河編 (新潮文庫)

 

 

(読書)ローマ亡き後の地中海世界/塩野七生

ローマ人物語を読み終わって、気になっていたその後の地中海を舞台にした続編。本書ではなんと西ローマ帝国崩壊からなんと17世紀までを描いています。

 

本書のテーマは副題にも「海賊、そして海軍」とあるようにずばり「海賊」です。そうワンピースの「海賊」です。

まず、地中海の海賊って、新大陸が発見された後もいたのです!これが衝撃の事実でした。これには理由があります。

僕ら日本人がイメージする海賊とは、いわゆるワンピース的な非合法な盗賊団になります。しかし地中海にいた海賊は、途中から国(トルコ)の認可をもらった軍団になります。これはもはや海軍、それもゲリラ部隊といえます。

 

そうこの本は、海賊(そして海軍)が席巻していた地中海をフィールドにした歴史叙述になります。ポイントは、地中海を舞台としたところでしょう。長期にわたる歴史叙述において、地中海に関係する部分をメインに抜き取ることによって、話が非常にわかりやすくなっています。さすが塩野七生さんです。

 

「パスク・ロマーナ」が機能していたころは内海だった地中海は、イスラムの台頭により境界としての海にかわってしまいました。つまりキリスト教イスラム教を隔てる海となった地中海。

この地中海を舞台にしたキリスト教イスラム教の覇権争いが描かれています。現代からでは想像しにくいですが、当時の時代の先端は、ヨーロッパのキリスト教国らではなく、イスラム教のトルコであったということ。

それは、どんな生まれであっても能力があれば上り詰められる社会システムにありました。マキャベリ曰く、スルタンはみな奴隷という社会制度は、逆にいうと、スルタン以外はみな平等でもありました。つまり血は関係がないということ。これってある意味、今のシリコンバレー的なことです。

寛容さについて

イスラム国家では上記の能力主義に加え、キリスト教徒でも2級市民(または奴隷)ではあるが生きていくことができました。そして改宗さえすれば、能力主義の世界に飛び込むことができました。当時、キリスト教魔女狩りをやっていたことを思うとまだ寛容だったのはイスラム教国であったともいえます。

しかし著者曰く一番寛容だったのは、カエサル時代の古代ローマでした。自分に敵対した相手についても、登用し自分の部下に組み込んだのがカエサルです。これもある意味能力主義ですが…。

 

「寛容」こそ正義としたいです。

塩野七生の名言

さて、恒例の塩野七生の名言集です。今回もいっぱいあります

事業とはそれが何であれ、参加者全員が欲しがっているものが得られると思えた場合に成功し、しかも長続きする。

 

平和とは、求め祈っていただけでは実現しない。人間性にとっては誠に残念なことでだが、誰かがはっきりと乱そうものなら、タダでは置かないと言明し、言っただけでなく実行して初めて現実化するのである。ゆえに平和の確立は、軍事ではなく政治意志なのであった。

 

少数が多数を支配していくには、少数のもつ権威と権力の有効性を示し続ける必要がある。

 

海賊業も産業化すれば、成功か失敗かを決めるのは、他のすべての仕事と同じで「人」なのである。

 

ヴェネチアが最後まで残ったのは、忠実で頼りになる下級船員を恒常的な確保を可能にする組織づくりに成功したからではないか。

 

修道士マタが考え実行した、まず見せる、資金集めはその後という戦略は完璧に成功した。

 

新たな文化文明は、いかに内部の強力な後援があろうと、外部の、つまり異分子による刺激がないところには生まれないのであった。

 

激震は時代の変化を直視することを拒絶しつづけてきた人々に痛打を浴びせることで無理やりに目を開かせる。

 

伝統とはあらゆる面でストックがあるということである。

 

マキャベリは指導者の条件として3つあげている。「力量」に恵まれていること、「運」にも恵まれていること、そして「時代が求める人材」であるとこ。

 

領土拡大の魅力に抗しきれた例外は、カエサルアウグストゥスティベリウスといった古代ローマ帝国ぐらい。

 

人を集めるのに、大儀よりは目前の利益のほうが効果がある。

 

敵と同じ戦法で闘うのが、勝つには最も有効なやり方ではある。

 

人は自信をつけると、その人のもっていた資質以上の働きをすることがある。

 

二人の司令官にそれぞれ別の任務を託す場合に考慮すべきことは、最終決定権はどちらにあるかを任命時にあきらかにしておくことである。

 

現実主義者が誤りを犯すのは、相手も自分と同じように考えるだろうから、バカなまねだけはしないに違いない、と思ったときである。

 

ヴェネチアの経済政策は、常に相手にも儲けさせることと約束を守ることを通じて継続性を重視することで一貫してきた。

 

「寛容」とは共生していかねばならない相手にも得意分野で力を発揮させることで、その人の存在理由を確認させ、それを基盤に運命共同化にもっていこうとする冷徹な支配哲学であった。

 

「パスク・ヒスパニカ」がならなかった理由は、近視眼的、つまり自分たち以外の他の民族を活用する才能に欠いていた。

 

戦争の熱を冷ますのは、平和を求める人々の声ではなく、カネの流れが止まったときではないか。

 

 

ローマ亡き後の地中海世界1: 海賊、そして海軍 (新潮文庫)
 
ローマ亡き後の地中海世界2: 海賊、そして海軍 (新潮文庫)
 
ローマ亡き後の地中海世界3: 海賊、そして海軍 (新潮文庫)
 
ローマ亡き後の地中海世界4: 海賊、そして海軍 (新潮文庫)
 

 

(読書)夏フェス革命ー音楽が変わる、社会が変わるー/レジ―

気になっていた音楽本です。

著者は、普段はコンサルティングをしているマーケッターのようで、音楽業界の外にいる人のようです。

この本のポイントは、夏フェス、その中でも特に何かと軽視されがちな「ROCK IN JAPAN FES」に注目して掘り下げていったことでしょう。フェスについて考察した本はいくつかありますが、やはりピックアップされるのは、フジロックになります。

そこをロッキンにフォーカスするあたりは、やはり観客目線なのでしょう。

 

実際、ROCK IN JAPAN FESの最大の特徴は、観客がどう思うかというところに視点が置かれています。本書ではそれを「協奏」として綴られていますが、過剰なまでなお客様主義にあります。クレームをなくす、快適に過ごすという点においては、ROCK IN JAPANは他のフェスよりも頭一つ抜けています。

それが音楽に興味がなかった人も足を運ぶ夏のレジャーとなり、フェスバブルがはじけずに続いていることにもつながっているのでしょう。

 

本書ではコンサルタントらしく、プラットフォームとしてのフェスを考察したり、フェスにおける「音楽」と「その他コンテンツ(フードとか装飾とか)」の立ち位置とかを考えています。

これらは、フェスに通う度に肌感覚ではわかっていたことですが、それを分かりやすく文字化されていました。

なかなか面白い1冊でした!

 

夏フェス革命 ー音楽が変わる、社会が変わるー

夏フェス革命 ー音楽が変わる、社会が変わるー