社会学者と芥川賞作家による大阪に関する連作エッセイ。ふたりが見た大阪。
社会学者の岸さんは愛知県から大阪に越してきた人。芥川賞作家の柴崎さんは、大阪に生まれて東京に越した人。
岸さんが上新庄というキタの人間に対して、柴崎さんは大正区に生まれたミナミの人。行動範囲が必ずしもキタ・ミナミできっちり分かれているのではないのですが、どことなくその雰囲気が漂う。
彼女のように大正区ではないものの下町サイドで生まれた僕は柴崎さんの子どものころの表現に心打たれる。
大正区をなすびと表現する表現力は笑ってしまいました。
この本は二人が切り取った大阪だけれども、外から描かれるコテコテの大阪感はない。これがしっくりくる。
大阪といえば通天閣と言われるが、多くの大阪人は通天閣の下まで行ったことは1回ぐらいなのではないだろうか…。
それよりも心斎橋そごうや阪急のステンドグラス、梅田のエッグマンや難波のロケット広場の方。新喜劇の劇場よりもその向かいにあったジュンク堂や梅田の旭屋書店。
心斎橋の地下鉄のシャンデリアは離れてみるとあれが日常だったのは、やっぱりすごいし、鶴橋の市場は東京から来た人間に言わせれば、現代日本ではない場所だった。
でもそれが日常にあふれていたのが、大阪で生まれた育った人間の大阪の印象。
豊かだった大阪の活力が落ちてきていると言われるが、それでも民力が強いなぁと離れても思う。
大阪を離れて20年がたってしまったけれど、それでも綺麗になった大阪駅に戻るとテンションあがる。僕が育った街だから。