以前読んだ『銃・病原菌・鉄』は本当に素晴らしい1冊でした。人類の歴史を歴史学の見地からではなく、科学的見地を含めた学際的アプローチで読みといていく。
古今東西の文明がどのように崩壊したか、存続されたか
本書では、モンタナから始まり、イースター島、南洋の島、マヤ、アイスランド、グリーンランド、ニューギニア、アフリカ、ハイチ、ドミニカ、そして日本と世界各地の文明がどのように崩壊または維持されたかを科学的な見地から解説している。
主に、文明の崩壊のきっかけは、食糧&資源の枯渇の場合が多い。特に土壌の重要性がさまざまな箇所で語られています。この豊かな土壌の造成のためには、豊かな降水量、森林の維持が不可欠となっています。
豊かな土壌以外についても、海洋性の蛋白質についても非常にあちこちで語られています。それを手に入れられない場合は交易の重要性も。
日本はなぜ文明が維持できたのか
数ある具体例の中からせっかくですので日本の場合について記しておきます。本書によると、江戸時代の強力な中央政府による森林管理をはじめとした統制のおかげと言い切れます。
材木の重要性を知っていた幕府はその管理体制を徹底させます。また結果として鎖国によってヨーロッパで流行していた病原菌の持ち込みを阻止しています。動物性タンパク質に関しては、漁獲に関しても統制をしたのをはじめ、アイヌとの貿易を拡大することによってしのいでいます。一方、人口に関しても江戸時代を通してほぼ横ばいだったことも幸いとなり、持続性のある資源消費率を維持し続けています。
慎重な楽観主義者の著者
本書を読むとは、正直「これから世界は大丈夫?」と不安に陥ります。最後の章には各種の環境問題、人口問題など12にも上る現代文明を崩壊に導きかねない問題が列挙されています。その上でも著者は慎重な楽観主義者というスタンスということです。それぞれの問題が解決可能だと考えています。長期的な視点と過去の価値観の訣別によってできるものが多いとしています。逆にそれをしてこなかったから過去の文明は滅んだとも言いえます。
また、グローバル化による連結よるとして問題を共有して解決していくこともかのうだろうとしています。
上下巻でかなりの分量がある大作ですが、秋の夜長の読書にどうぞ。ちょっと憂鬱になりますが、知的好奇心は満たされる一冊です。
文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)
- 作者: ジャレドダイアモンド,Jared Diamond,楡井浩一
- 出版社/メーカー: 草思社
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文明崩壊 下: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)
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