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(読書)言ってはいけない/橘玲 ~科学と人道の間を感じる本

毎回、魅力的な題材をテーマにする著者。僕自身、特に金融もの経済ものの著作にはかなり影響を受けました。本作は社会学とかに分類されるのでしょうか。そして20万部を超えるヒット作となっています。

科学の発達と人道的見地の間で

遺伝や美貌、環境因子の差で人が社会にどのように影響が出てくるのかということのデータの列挙が続きます。

例えば、美貌格差では、美人とブスでは3600万円の経済格差が生まれているというデータや、男性では「面長の顔」は「細長い顔」に対して、上に立つことが多い一方、入社試験ではその暴力性から嫌われる傾向にあるなどなど。

しかしこうした悲劇は、自分においてだけであればまだしまっておけます。しかしこれが相手があることになった場合、より人道的見地とのはざまに立たされます。

犯罪について項目で、脳科学の発達によって犯罪の抑制ができるということが挙げられています。しかし、まだ犯罪を起こしていない人をそのようなデータをもとに治療することはできるのかという問題がある。

実際、ナチスが説いたユダヤ人迫害の歴史があるように、データというものはそのときは正しいと信じられていたものでも、のちには誤っている場合があります。

統計学というものは、自分が望むような方向でデータを切りとり悪用することができる部分が多分にあります。このデータは客観的なのか、その視点を持つ必要があります

 

読んでいて感じるのは、科学や統計学の発達によって、「人はみな平等」という人道的考えとの壁です。

データが明らかにするのは、人は生まれながら、育てられた環境によって違うということ

違いというものを認めることによってより社会が(当事者にとっても)幸せになる方法をとることに必要性があるのではないでしょうか。

子育てについて

本書の終盤で、子育てについてまとめらています。

子供は遺伝と「非共有環境」によって人格が形成されることが科学的に証明されています。この「非共有環境」というものは、友達集団ということになります。

子供は友達集団の中で、グループの掟に従いつつ役割を決めて自分を目立たたせる複雑なゲームをしている。

ということです。子供は遺伝的資質に基づいて、どの分野のそれで発揮することがアイデンティティを持つことができるかを図っているということです。親はそれに関知することはできません。この点においては親は無力です。

しかしどういう友達集団に入れるかは親は関知することができます。例えば、女子校出身のエリートが多いのは、勉強することに対しての抵抗を女子校では感じずに済むということ(男の目線が気にならないから)の裏返しであるということです。

本書では子供の才能の芽を摘まないような環境を与えることが大事だと説きます

それに加えて、僕に意見を入れると、世の中にはさまざまなアイデンティティがあるということを知ることも大事な点ではないか、そう思っています。さまざまな違いや個性があることがわかればそれに対しての免疫もできますから。

 

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)

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