東京大学で遺伝子解析の研究をし、バイオベンチャーを立ち上げた著者によるビジネス本。根本的に理系的思考があることで通常の自己啓発本とは一味違った切り口になっています。多くの自己啓発本が科学的思考が欠落しているのに対して、ある一定の著者の考え方が示されています。
例えば、情熱の源泉について。
プロジェクトの初動に大事な情熱についてですが、著者は下記のように定義しています。
この図解が言いたいのは、行動した時と行動しなかった時の未来の差分と初動の大きさを積分した部分を情熱の源泉と規定するというもの。おぉ、なるほど。今自分が動いたことで変わる世界、そして初速の行動量が情熱というわけかと腑に落ちました。
また時間の認識についても説明がありました。
時間には、
- 自然変化…物理的なもの
- 環境変化…社会的なもの
- 行動変化…個人的な活動
- 生命変化…個人の生命的な変化(加齢など)
という4つの認識軸がある。時間の認識とはこれらのうち「2つ以上の異なる性質を持つ変化」の比較という相対的なものであるとしています。具体例としては、スマホをみてあっという間の1時間と、好きな人と話す1時間は違うということです。つまりスマホの1時間は、行動変化や物理変化が少なく、好きな人との1時間は行動変化が大きいことに由来します。これによって時間の認識が大きく変わります。
こうした理系的視点が数多く示されますが、結論としては多くの自己啓発本がいうことと共通することが多いです。
- 広い視野を持つ(空間的視野/時間的視野)
- 客観的視点と主観的視点の両方を持つ(右手にソロバン、左手にロマン)
- 不確実な世の中だからこそ多様性(性別、国籍、年齢といったでもグラフィックなものではなく、タレントの多様性が大事)
- 時間軸をいくつか持つ(議論が噛み合っていない時は、時間軸合っていない場合が多い)
と言ったようなことが書かれていました。
あとがきで著者は、
変革をどのように受け入れ、どのような未来を思い描き、どう前に進むか、それこそが「思考」であり、人類の唯一の希望である
と記しています。生命原則的に、人類は種を残してきました。
その過程には様々なチャレンジがあり、結果環境に適したものが残ってきています。環境を変えるのは大変ですが、適したものが生き残ってきたと考えるのが正解なのでしょう。