橘玲の本になります。
今回は、ビッグファイブ診断という心理学の研究を元にかかれた一冊になります。
ビッグファイブとは、人は5つの因子から成り立っているとしており、
- 外交的/内向的
- 楽観的/悲観的(神経症傾向 ※楽観的が低く、悲観的が高い)
- 協調性
- 堅実性
- 開放性
の5つの要素を組み合わせて人の性格は形作られているとしている。
これに著者は、
6.知能
7.外見
を加え、さらに協調性を
3.1. 同調性
3.2. 共感力
に分けた8つの要素で人を分析できるとしている。
これを世の自己啓発本に当てはめると
- 高い外交性を獲得する
- 高い精神的安定性を獲得する
- 組織の中でうまくやっていく同調性を獲得する
- 高い共感力(コミュ力)を獲得する
- 高い堅実性(自制心/自己コントロール力)を獲得する
- 高い開放性(創造力)を獲得する
- 高い知能を獲得する
- 魅力的な外見を獲得する
ということになります。これは高度知識社会においては有用なパーソナリティなのだからいずれも正しい。ただ問題は、パーソナリティはそう簡単には変えられない。遺伝率は平均5割程度、残りが非共有環境が友達環境などに影響される。
人はそうそう変えられない、というのが最近の著者の意見で、他の著作でも度々出てきます。そのうえで著者が指南するのは、自分が何者かをわかったうえで、アドバンテージを持つ場所で生きるということ。
内向的な人は営業職に就かせるのは本来無意味であり、開放性が低い人がイノベーティブな仕事を任されてもうまくいかない。パーソナリティの向き不向きをわかって、得意なジャンルで頑張りなさいという。
堅実性が低い場合は、ADHDと診断されるが、テクノロジーが爆発的に発達するのであれば、変化の激しい環境に最適化されたADHDの時代が来るかもしれない(実際、発明家はADHDの診断をされている人も多い)。神経症傾向が高い人は、実は細かい仕事には向いている。
ビッグファイブについて、そしてこの本を読んで思うのは、世の中には様々な因子を持った人がいるということを知ること。これは実は進化の過程において、変化のある社会を対応するうえで重要だということ。
組織(社会もだが)において、一人で事を成すことはできない。外勤があって内勤があることで組織がまわる。マニュアルをきっちりこなす人がいて、それを破って冒険をする人がいる。そういう風に色々な人材を抱えておくことが組織において大事なのではないかということ。
あぁ、そろそろ人事異動の季節がやってきます。
もう一つ、本書を読んでいて腑に落ちた部分があります。
「同じだけどちがう」という二重のアイデンティティがあるというくだりです。本書では子どもたちを例に、子どもは「仲間」か「よそ者」をドライに分類していきます。その中で単に自分を集団と一体化するだけでは、子孫を最大化するという進化の適応ができないので、目立つ個性を作らないといけない。
これを著者は、社会的アイデンティティと個人的アイデンティティと名付けていました。
これは僕が以前よく思っていた、メジャーでありたいということとマイナーでありたいという、一見すると矛盾する感情についてうまくまとめられています。
人と同じであることによる安心感、人と違うことでの個性。
ルールの上での差別化とでもいうのでしょうか。これを上手く説明してくれたのはあっぱれです。