面白いエッセイの出だしが、断定で始まることが多い。もしくはある事実を述べるのみ。
デザイナーである著者。このエッセイ集は、まさに読みやすい。ほどほどに言い切られる文体。1篇が5ページほどと文章量も多くない。
こういう文章が書ける人がうらやましく思う。
内容としては個々デザインに対する思い入れやら考察などからはじまり、日常生活などにも言及されている。
一つ気になったエピソードとしては、「カンプ職人に対するディレクション」についてかかれたもの。「ここをこうやって、ちょっとこうしよう」というディレクションをしているとカンプ職人が、ゲラを破り捨てて、一から書き直しを始めたというお話。
単純に見えたデザインでもいろいろなものが重なり合った結果できあがっていて、素人が言うほど単純ではない。出来上がったものについてアレコレと言うのは簡単だけれども、そこに至る経緯については思いを馳せられない。
ゴミ箱に捨てられたゲラを見ると胸が痛むという内容でした。
あぁこういう経験あるよね。一流のデザイナーでもあるのかとも思う。
プロダクトは結果がある意味ではすべての面もある(最近はストーリーが……というところもあるけれども)。
やはり発注するとき、途中の工程でもっと細かい指示ができていればこういうことにならなかったのではないかと悔やまれる。
仕事を丁寧にとはこういうことなのでしょう。