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(読書)ローマ人の物語 危機と克服/塩野七生

悪名高き皇帝 ネロの後の時代のお話しです。期間としては短いのですが、それは苦悩&悲観にくれる一方で再建につながる時代でした。わずか30年の間に7人の皇帝が入れ替わります。最近の日本の総理大臣もびっくりの短期政権です。

7人の皇帝とは?

短い30年の間の皇帝らの一口メモです。
 
  • ガルバ  悪名高きネロの後を継いだ平凡な老人。上に立つ人ではなかった。
  • オトー  ライン軍団とドナウ軍団という内乱である第一次ベドリアム戦を引き起こす。臨機応変能力がリーダーの条件であるが欠如。そのため愚者の戦いになった。
  • ヴィテリウス  第一次ベドリアム戦で勝つも敗者の処理に失敗。ドナウ軍団の反感を買い、再び内乱へ。
  • ヴェスパシアヌス  ムキアヌスという相棒を持ち、第二次ベドリアム戦を手を下さず勝利。ローマ帝政を立て直す。健全な常識人。
  • ティトゥス  ヴェスパシアヌスの長男。愛される皇帝だったが、2年で病死。
  • ドミティアヌス  ヴェスパシアヌスの次男。強健を発動する。暗殺され記録抹殺刑となる。ただ外交ではリメス・ゲルマニクスという防壁の建設などに取り掛かる。
  • ネルヴァ  のちの五賢帝になるトライアヌスへのショートリリーフ。
 
この中でも個人的に特筆すべきは、ガルバ・オトー・ヴィテリウス・ヴェスパシアヌス時代の内乱について。2年で4人の皇帝が変わります。
帝政とは、やはり天才でなくても健全な常識人が運営しないとこうなるということを示しました。
その内乱を収めたのは、ヴェスパシアヌス。著者の評価は、「独創的でもなく抜群の能力が無くても、帝政というしっかりした統治システムを復活させることで統治した」ということでした。
それほどまでにカエサルアウグストゥスが作った帝政というシステムはしっかりできていたということです。

帝政と権威について考えてみる

カエサルアウグストゥスの天才的創造の賜物である帝政について、著者がまとめていました。
ローマという企業も世界的な規模をもつ国際的な大企業に成長した以上、そのトップ(執行官)が1年ごとに変わったり、取締役300人の合議制(元老院)では運営できない。

こうして生まれた帝政ですが、アウグストゥス皇帝というものに「権威」を持つ必要性を感じていました。それをアウグストゥス「血」というものに求めました

ただこの時代に入り、アウグストゥスの「血」というものに変わる権威を作る必要性があったことが歴史を振り返って分析することができます。
つまりはローマ軍団によるバックアップということでしょう。
 
これって今の国際社会にも通じます。軍事力を背景にした国際社会の発言力です。皇帝の権威を国の権威と読み替えると、実は今の時代と人の考え方としては変わっていません。
ちなみに、国の権威として軍事以外では資源・宗教・経済力などもあるのでしょう。

リーダーの素質について

もうひとつ、この時代の内乱から学ぶリーダーの素質について考えてみます。
平凡な資質の持主は本能的に自分より優れた資質の持主を避ける。自分にない才能や資質を迎え入れることで自分自身の立場を強化するなどという思考は平凡な出来の人には無縁なのだ。
これは著者の言葉ですが、なるほど。自分より優れた才能を受け入れることがまず第一歩です。
内乱を鎮めたヴェスパシアヌスには、ムキアヌスという相棒がいました。天才アウグストゥスにもアグリッパという相棒がいました。
カエサルほどのスーパーマンではない限り、やはり自分にないものを受け入れる人が大事のようです。
 
 
次は五賢帝時代です。
危機を克服してさらに繁栄するというところが、ローマの強いところです。

 

ローマ人の物語〈21〉危機と克服〈上〉 (新潮文庫)

ローマ人の物語〈21〉危機と克服〈上〉 (新潮文庫)

 

 

 

ローマ人の物語〈22〉危機と克服(中) (新潮文庫)

ローマ人の物語〈22〉危機と克服(中) (新潮文庫)

 

 

 

ローマ人の物語〈23〉危機と克服〈下〉 (新潮文庫)

ローマ人の物語〈23〉危機と克服〈下〉 (新潮文庫)