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(映画)花束みたいな恋をした@109シネマズ名古屋~カルチャーと現実の間を見事に描いた作品

本ポスターもお披露目!

 

★★★★

終電で出会った大学生の二人。趣味・好みがあまりにも近く、運命だと思い恋人になる。大学生から社会人への2人の5年間を描く。

 

「はじまりはおわりのはじまり」という言葉が表すように、恋愛のスタートは摘み立ての花のように素敵です。しかし哀しいかな枯れていってしまいます。自分の好きな分野にいること、その一方で社会にでて擦れていくこと、その両立を図ろうと延命するものの日がたった花束のように萎れていきます。

この延長線上で考えると「結婚」というワードも意味深です。それは花束を「ドライフラワー」のようにするという考え方なのかもしれません。

 

もうひとつ、本作の魅力はその演出です。

音楽・本・映画・展覧会・舞台……本人らがそこに価値観を見出していたCINRA&リラックス的なカルチャーワードが本当にたくさんでてきます。古くは「なんとなくクリスタル」、ちょっと前の「モテキ」のように固有名詞で雰囲気を作る手法は、個人的に好きな演出方法です。

 

「他人の本棚を見るとその人がわかる」というのは僕の持論のひとつです。本作でも麦が絹の家に初めて行った時に「まるでウチの本棚」と呟いています。インプットが同じであれば、考え方や好みは必然的に同じになっていきます。

そして「本」を通して、二人の心のすれ違いを表す演出につながります(本屋のシーン)。もう見ていて胸の奥が痛くなります。

 

「カルチャー」という点では、本作が2020年のはじめで終わりを迎えます。コロナ禍でカルチャーが壊滅状態の時に、公開されるという不思議なめぐり合わせ。「カルチャー」は不要不急、そう花束みたいなもの。ただあると生活にゆとりができます。

 

本作は時々、トイレットペーパーを持つシーンが出てきます。トイレットペーパーって超現実的な物品です。花束や「カルチャー」とは正反対の位置づけですよね。そしてそれらが同居するのが、現実なんだと思います。カルチャー(夢)と現実をどう同居させるのか。

 

これは感受性豊かな時の恋愛の物語。気があう人とは、朝までしゃべっても飽きません。僕にもあったような気がします。

そして気づきます。あの頃には多分、戻れないということを。

なんと味わい深い作品なんでしょう。

 

hana-koi.jp