★★★★
新海誠監督作品、最新作。
「君の名は」では隕石衝突。「天気の子」で大雨(温暖化)という災害を描いてきた深海誠。そして今回は、地震。
東日本大震災から12年。記憶が薄れつつある中でのこのタイミングでの作品でした。
宮崎から始まったお話が、四国、神戸、東京、福島へと続きます。ロードムービー的な一面があります。ロードムービー映画の特徴であるのが、主人公の成長。本作もそのパターンにあり、各地の災いを収めつつ主人公が成長していきます。
その成長とは、大人になること。大人になることとは、自分のトラウマに向き合うこと、それを克服すること。この大命題は、大人になった後の自分自身が感じたことであり、他の映画でも度々描かれて、そのたびに僕は「そうだよなぁ」と感じています。
本作のトラウマとは、文字通り「震災」。高校生になる主人公「すずめ」が心の奥底にしまい込んだ震災の記憶。それと向き合う物語。
本作はそれを「扉」という象徴的なものとして表しています。
作品の物語として各地の忘れ去られた場所で災いが起こるということなのですが、その記憶というものを一般の人々の記憶としての「扉」として表しつつ、もう一方で、自分の記憶についての「扉」を開けて向き合う。
その2つの意味での「扉」を使った良作だったと思います。
「天気の子」では批判があった2人の世界系(世がどうなっても二人の世界を守るという純愛)が、世の中と向き合ったときのパターンとして紡がれた作品だったと思います。
※ちなみに「天気の子」は、個人的には世界がどんなことになっても人々は、生きていくという意味で、僕は好きなストーリーでした。