★★★★
ベストセラーを誇る吉田秋生のコミックを実写化したドラマ。鎌倉で暮らす、幸(綾瀬はるか)、佳乃(長澤まさみ)、千佳(夏帆)。そんな彼女たちのもとに、15年前に姿を消した父親が亡くなったという知らせが届く。葬儀が執り行われる山形へと向かった三人は、そこで父とほかの女性の間に生まれた異母妹すず(広瀬すず)と対面する。身寄りがいなくなった今後の生活を前にしながらも、気丈かつ毅然と振る舞おうとするすず。その姿を見た幸は、彼女に鎌倉で自分たちと一緒に暮らさないかと持ち掛ける。こうして鎌倉での生活がスタートするが……。(シネマトゥデイ)
綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずが演じる4姉妹の物語。6月公開で評判が高く気になっていました。なんとか公開終了までに映画館で観ることができました。公開から2ヶ月経っているにも関わらず、かなりのお客さんが入っていました。
さすが是枝監督作品!
まずは是枝監督作品らしく、言葉で説明しすぎない良さ。これぞ大人の映画というところでしょうか。
映像は全体的に霞がかかったように淡い。人生とは淡く儚いということなのですかねぇ。
鎌倉の四季についても魅力的に描かれています。あと個々の美人女優も。しっかりしているけれどもどこか陰を感じる長女、エロくズバッという次女、個性的な三女、そして大人と子供の境目でいましかできない演技をする四女。それぞれをこれだけ魅力溢れるように描ききるのは監督の力量といえます。
テーマについて(ネタバレあり)
本作の主なテーマは、思うに
・コンプレックスの克服
・生の中に生き続ける「死」というもの
の2つだったと思う。
本作は、他に女をつくり、自分たちを置いて出て行った父の葬儀から始まる。
この姉妹にこの「父」というものは、コンプレックスになる。つまり「父」の不在ということ。
コンプレックスというものはみんなが持っているものを持っていないときにうまれるものですので、この「父の不在」(実際はここに「母の不在」も加わるのですが)こそが彼女たちのコンプレックスとなっていきます。
娘は「父」と似た人と付き合うといいます。
姉妹にはそれぞれ恋人が登場します。特に長女の恋人は、妻子がいる男でした。それは自分の父と同じ境遇となります。
自分たちを置いて出て行った「父」。それを否定しつつ、自分たちはその「父」の影響を受けているということもわかっている。これを克服する(赦す)映画であったと思います。
最近、個人的に感じる「コンプレックスの克服が人の成長のひとつ」というものですね!
もうひとつ「死」について。
本作は、葬式から始まり葬式で終わります。
先の「父」の特徴を否定しつつもその影響があることを本人たちも認識しています。
映像的には、生を感じる食事シーン、仏壇、葬式、毎年つけている梅酒などいろいろなものが出てきます。
みんな、代々受け継がれてきたものたちです。
こうしたことをバランス良く配置することによって「死」(あるいは「血」)が日常的にあることを暗示しています。
父や母がどこにいようが、私たちはそんな父と母の子であることは、否定しようもない事実。これを受け入れることがコンプレックスの克服である。そしてそれが、人の成長である。
そんなことを考えさせられた映画でした。
本作中に出てくる梅の木についての言葉。
『毛虫をとったり、実をとったり、生きているものは手間がかかるのよ』
言葉での説明があまりありませんでしたが、その中でジーンとくる一言でした。
今年オススメの1本です!