★★★★☆
秋の映画シリーズです。今回セレクトしたのは、10月公開だった『蜂蜜と遠雷』。評判を噂で聞いて観てきました。そしてビックリ。これは今年一番の作品になるかも。
新しい音楽映画のかたち
近年の音楽映画では『ボヘミアン・ラプソディ』そして『セッション』あたりが高評価だったと思います。『蜂蜜と遠雷』はそんな音楽映画とはまた違う音楽作品でした。
新人の登竜門となるコンクールを舞台にした、4人の天才たちの競演、共鳴(←ここ大事)。天才たちがみる風景とはこんな形なのかと想像させてくれます。
その中で一人、「生活者の音楽」を掲げてコンクールに挑む高島明石(松坂桃李)という天才が、われわれ観客と他の天才を繋いでくれるという構成。
また主人公、栄伝亜夜(松岡茉優)のコンプレックスの克服という設定も、個人的に昔から思う、コンプレックスを克服することが大人になるということ、とも通じており最高の設定です。
これらが、セリフ少なく、音と表情で語りかけてくる。やはり松岡茉優という天才女優の演技力はその奏でる音楽ともあって圧巻。もちろん松坂桃李も良い演技で、生活感と少しの狂気を感じさせてくれます。
天真爛漫、だけど裏にある努力という天才っぷりを見せてくれた新人、鈴鹿央士も素晴らしかったです。
監督・脚本は「愚行録」の石川慶さんという方。一部にヨーロッパ映画のようなカットもありつつ、大衆にも刺さる演出もある。これは注目です。
今作ほど、音と表情だけで涙できる作品はないのではないでしょうか。心揺さぶられる音楽を映像として初めて観た気がします。ぜひ映画館の音響で観てみる1作です。
世界が鳴っている。あなたが世界を鳴らすのよ。
なんてすばらしい世界なのでしょう。