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(映画)アクト・オブ・キリング @名演小劇場

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★★★☆

 

映画の日ということで、久しぶりに名演小劇場へ。

選んだ映画は「アクト・オブ・キリング」。ライムスター宇多丸のMOVIE WATCHMENで好意的に紹介されていたので観にってきました。
 
題材は、1965年のインドネシアで起こった大虐殺。100万人とも言われる華僑が反共という名のもと殺害されたというもの。正直、このような虐殺が戦後に、それもインドネシアという割と近い国で行われたことは知りませんでした。
 
斬新なのは描き方のアプローチ。
監督は元々、よくあるドキュメンタリー映画のように被害者の立場から映画にしようとしてましたが、軍による介入で進みません。そこで加害者側による虐殺の再現というアプローチで撮影します。
驚いたことに加害者側は喜んで参加します。おそらく罪の意識というものがない(または忘れている)状態なのだと思います。
映画の序盤では、愉快に殺害方法を紹介しています。この姿は日本に生きる僕らにとって衝撃的で滑稽ですらあります。
 
しかし映画が進み、再現することによって忘れていたものが蘇ってきます。
加えて殺害される側のシュチエーションをやるという設定(おそらく夢でうなされるという設定なのか)を体験します。このシーンで主人公は、「人間の尊厳を失う」と表現されていますが、この尊厳を失うということが本当のp恐怖を生むということが分かるシーンでした。
ラストシーンでは、序盤に面白く紹介していた殺害シーンと同じ場所でのカットとなります。同じ場所での主人公の表情の違いが印象的でした。
 

人間というものの本質をついた映画

・人を殺めるということは、人間の本質的に拒否反応があるのではないか
・人は辛いことを忘れるようにできている
・人の尊厳を失うということこそが、本当の恐怖
 
映画の冒頭、「殺人は許されない。殺した者は罰せられる。鼓笛を鳴らして大勢を殺す場合を除いて」という言葉が紹介されます。
この言葉にあるとおりで、加害者たちは当初あっけらかんと殺害を語ります。
しかし、人間の本質として人を殺めることに対する罪悪感というものは、埋め込まれているのではないでしょうか。
人間の本能として忘れることによって、振り返りたくない過去には蓋をする。
本作では虐殺の再現という行為を通して、その蓋をこじ開けていく。そんなドキュメンタリーでもあったと思います。
 
もう一つ、映画の象徴的なシーンが、加害者側が被害者として殺害を味わうシーン。このシーンで主人公が感想として言った「人の尊厳を失った時の恐怖」という言葉が胸にグサっときます。
「人の尊厳」という言葉なんて、憲法なんかで出てくるぐらいで、今まで全く認識していませんでした。あって当たり前の世界に生きているのです。これがいかに素晴らしいことなのかということに、ハッと気づかされるシーンでした。
 
観ている最中よりも、観終わってしばらくした後にいろいろ考えさせられる映画です。