春に観に行った映画版「騙し絵の牙」。なかなか面白かったのですが、映画版と小説版とは全く違うということを聞き、小説を読んでみました。
映画の主人公を演じた大泉洋にあてがきをされた作品の原作。映画では大泉演じる主人公速水よりも松岡茉優演じる後輩の方にスポットがいっていたのですが、小説はまさしく速水が主人公。
映画の騙しあいが、速水のテクニックに加えて、松岡茉優演じる後輩も加わるのですが、小説はあくまで速水が主体。
大泉洋を彷彿とさせるひょうきんさ、ユーモア、人たらしに加えて、芸能界に漂う影を主人公速水に背負わせています。
出版社が舞台ということですが、そこに出てくるのは、出版という斜陽さ、社内派閥争い、作家との絆、営業、家庭問題、色恋……。
なんとも人間らしいものが詰め込まれています。快刀乱麻ではない騙し屋がそこにはありました。どこかしらみんなが持つ不安。
映画ではそれは音楽的に表現していましたね。
ただこれを映画化すると散らかるだろうなぁ、だから根本的にわかりやすく組みなおしたのだろうなぁ。そんな小説でした。