大好きな沢木耕太郎作品ということで読んでみました。失礼ながら写真に明るいわけではないので、この本で初めてロバートキャパという存在をしりました。
キャパの初期の代表作である「崩れ落ちる兵士」。スペイン戦争の象徴的な1枚なのだが、本当にこれは戦場でとられたのか……。そんな疑問が付いて回る写真だった。
著者もその疑問を感じ、ここまでやるかという推理が展開される。
結果、著者の結論としては、キャパではなく相方であるゲルダによる撮影で、かつ足を滑らせた際の写真であるとしている。
こう書くとなんだと思ってしまうのだけれども、その調査にかける熱い思いが素晴らしい。もちろん謎解きノンフィクションとしても面白いのだけれども、単なるネタバラシではなく、キャパへの愛情による真実を知りたいという思いが随所に感じられました。
実際、本書の最終章、キャパのその後についての文章は素晴らしく、沢木耕太郎らしさ満載でした。
本写真の謎を抱えたキャパの心情を代弁し、有名になった「キャパ」がどんな思いを抱えていたのかを追う下りは一読の価値ありです。
なので、『キャパの十字架』というタイトルは本当に秀逸です。
沢木耕太郎氏の作品にある、ある人の人生に(嫉妬にも似た)寄り添いが感じられた1冊です。