直木賞候補にもなった話題書『同志少女よ、敵を撃て』を読了しました。
舞台は第二次世界大戦の独ソ戦。ソ連の女性狙撃手たちの物語。作品が公開されたのは2021年ですので、ソ連のウクライナ進行の前になります。
本書でもウクライナのことが出てきます。その微妙な立場も意図せず触れています。
戦争小説としても引き込まれて読み進められますが、個人的に秀逸だったのは戦後について触れらていたことでしょうか。
戦時下というのは、特殊な才能(この場合は狙撃)がフォーカスされ、平和なときにはその能力が役に立たないということ。それにより戦後鬱が発生すること。
生死を分ける緊張状態からの解放が、人間の精神バランスを崩す……。
独ソ戦の女性兵士の作品というと『戦争は女の顔をしていない』というノーベル文学賞受賞のロシア作家のアレクシエーヴィチの作品が有名ですが、ここにも少し物語の中で触れらていました。
「戦いたいか、死にたいか」という二択を迫られた18歳の少女セラフィマというひとりの女性の成長記でもあり、戦争という大局について考えさせられる作品でした。