
★★★★☆
大学時代からやっていたバックパックの旅。就職をしてからも子どもができるまでは、休みを取っては世界をプラプラしていました。
旅、特に一人旅には魔法があり、不思議な一期一会出会いがあり、自分に向き合ったり、生きていく術を身に着けたり、生きていく自信がついたりします。
本作の一つの主題である「旅」について、感じてきた「旅」の本質(「一休みはより長い旅のため」「旅は何がおこるか分からない」というフレーズがあるように)が適格に詰まった作品でした。
主人公は台湾人(シュー・グァンハン)。彼が18歳の時に出会った異国人(清原果耶)との淡い恋と、社会につかれた36歳で喪失を埋める旅を日本でするという物語。
監督は『余命10年』の藤井道人。ということで、あまりにもベタなストーリーで、先も読めてしまいます。それでも『旅』『恋』という前では、わかっちゃいるけど涙腺ゆるゆるになってしまいます。
「恋」の部分では、18歳の時の初心さ。その演出は臭いところもあるのですが、それでも良いじゃないですか。青春とは青臭いものです。
そして36歳の立場で喪失をした主人公が言う『誰かの1ページに残せたか』というようなフレーズに涙です。
「約束」を果たしたら(夢をかなえたら)再会しよう。という心持で36歳まで走ってきた主人公の気持ちもよくわかります。
今回思ったのが僕が、運命的なレールがあるという登場人物のどうしようもないことを描いた作品が好きなのですね。
ピュア映画な映画の場合はエモい映画になり、ダークサイドに描くと社会の不条理な作品(例えば『市子』『空白』)も好きなパターンになります。
もうひとつこの映画を観て気付いたのは、もう18歳にも戻れないということ。36歳の立場はまだ理解できるが、それも少し旬を過ぎている気もする。そんな年ごろを感じた作品でした。
劇中「旅にゴールはない」というフレーズがあります。そうかもしれません。そう信じたいです。
個人的に思うこと、考えることが多すぎる映画でした。