★★★☆
「ヤクザと家族」以来、最近妙に気になる女優、尾野真千子さんが出ているということで鑑賞した映画。
本当に、尾野真千子さんって、こうした幸薄い役を演じたら、今の日本最高峰なのではないでしょうか。
バンドマンだった夫を自転車の交通事故で亡くした母子の物語。上級国民との格差、男女の格差、分断で満ち溢れている今。
そして世の中は不条理なルールで満ち溢れている。
コロナ禍で撮影されており、各所にマスク描写も出てきます。2020年はこういう社会だったのだという映画だと思う。
尾野真千子演じる母は、元劇団員。「まぁ、がんばりましょ」で怒りを抑えている。そんな母を演じる。娼婦を演じる。演じることで怒りを収めているのでしょうか。
本作の前半に多用される「まぁ、がんばりましょ」が、後半は出てこなくなる。また、父の交通事故が自転車事故だったことから自転車には乗らないというルールやマスクといったルールを破るあたりから、彼らなりの人生が始まる。
生きる意味ってなんだろうね。
中一の息子を演じた和田庵。尾野真千子とともに娼婦を演じた片山友希。登場シーンが少ないのに存在感を出すオダギリジョーと永瀬正敏。彼らも素晴らしい演技でした。
2時間半近くあり、正直もっとカットしてもいいとも思いますが、この紆余曲折も含めてこの映画なんだろうなぁと思います。
一つ残念だったのは、ラストの夕焼けのシーン。なんであの絵になってしまったのだろう……。それが残念。
ちなみにエンディング楽曲は、GOING UNDER GROUND『ハッピービート』。これはこれで嬉しいのですが、なんで『トワイライト』じゃなかったのだろう。
その時点の最善の選択をしていったはずなのに、どうやっても不幸になってしまう人生。それはとても難しいゲームをしているかのよう。
「幸福の形はいつも同じだが、不幸の形はそれぞれ違う」といったのはトルストイ。
人生ってなんなのだろうか。そんなことを考えさせれられる映画